ガーザの街の冒険者ギルド

 ギンの機嫌が直ったし、門番の言っていた案内の看板も発見したので確認に行く。

 看板は町全体の地図になっていて簡単にどこに何があるのかが記してあった。

 冒険者ギルドは―― 


「あった」

 

 今いる場所が北の門らしく、冒険者ギルドがあるのは西の門の近く。

 銀級のタグは更新したばかりで、あと一年は依頼を受けなくとも失効することはない。ガーザの街で冒険者として活動する必要はないけど、双子たちを探すならまずは冒険者ギルドだ。

 早速、西の門の近くにある冒険者ギルドへガーザの街並みを見ながら向かう。

 ガーザの街はロワーの街よりも舗装が進んでおり、砂利っぽい道が多い。ロワーの街は歩く度に靴とズボンが汚れていたのでこれは普通にうれしい。

 街並みは結構狭路が多く、裏路地にはたくさんの何屋かよく分からない店があった。

 歩くこと数十分、冒険者ギルドに到着する。

 レンガ造りの三階建ての冒険者ギルドの正面にはレンガのアーチと看板があった。 ギルドの隣はロワーと同じで冒険者用の宿屋があり、昼前なのにすでに中からは酔っ払いの大声が聞こえた。冒険者はどこも変わらないけど、飲んだくれるのはまだ早くね?

 冒険者の宿じゃないところに泊まりたいけど、ユキちゃんたちいるしなぁ。

 冒険者ギルドに入るとガヤガヤしていた音が止む。はいはい。フェンリルが通りますよ。

 ガーザの冒険者ギルドの受付はロワーのそれよりも広く、誰の趣味か知らないけどデカメロンな受付嬢ばかりだった。受付の周りの冒険者、みんな乳しか見てないじゃん。

 デレデレと鼻の下を伸ばす冒険者の後ろに並ぶ。


「次の人、どうぞ」


 受付に向かい、冒険者タグを出すとグレイスと名札を付けた受付嬢が目を大きくしながらタグと私を交互に見る。


「その若さで銀級の上って凄いのね」


 そう笑顔で言ったグレイスの乳がポヨンとカウンターの上に乗る。え? なんで乳を乗せたん?


(乳、ねぇ、乳!)


 なんだか唇を舐め上目遣いで見てくるグレイスに『少年』と呼ばれる。あ、これガークパターンだな。白けた顔でグレイスに言う。


「私、女なんだけど」

「え? あ、嘘!」


 うん。即座にカウンター乳が撤収された。さよならメロン。タグを確認したグレイスが作り笑顔で尋ねる。


「ロワーの街の冒険者なんだ。ガーザの街へようこそ。今日はなんの用なの?」


 グレイスに興味なさそうに言われる。女って分かってから急に態度変わり過ぎじゃね? 隣の受付嬢を見れば似た感じの対応だった。何、ガーザの冒険者ギルドってこんな感じなん?


「ちょっと人探しをしてて。15歳くらいの双子の姉弟の冒険者なんだけど」

「え? イーサン様のパーティにいる双子? あなたももしかしてイーサン様のファン?」


 イーサン……様? ファン? グレイスが態度を変え目をギラギラさせながら尋ねてくる。何あの人……モテてんの?


「いや、ただの知り合いだけど」

「えぇ、そうなの? ねぇねぇ、それならイーサン様を紹介して。彼ったら全然相手してくれなくて。もうすぐ一人になるから狙い――」

「別にイーサンはどうでもいいけど、双子が今どこにいるか分かる?」

「紹介してくれるの?」

「いや」

「個人情報はお伝え出来ませーん」


 明らかにムッとしたグレイスがツンとしながら言う。ガーザの街にまだ滞在してるって情報が掴めたから別にいいけど……。


「じゃあ、その双子に言付けを頼める?」

「え? 言付け? そんなのできたかな? ねぇねぇ――」


 グレイスが隣の受付嬢に言付けができるかどうか尋ねるが、知らないと答えが返って来る。え? この受付嬢たち大丈夫なん?

 結局、裏に聞きに行ったグレイス。呆れたように中年の女性が声を上げるのが聞こえた。


「言付けくらいできるに決まっています!」


 受付に戻って来たグレイスが面倒そうに言う。


「言付け、できるって。あ、でもイーサン様へのラブレターはお断りですよ」


 んなもん言付けするわけないじゃん……。顔を引きつりながら双子への言付けを残す。


ミラ・ミロへ


ヒサシブリ。私、カエデ。今、ガーザにいる。アイタイ。


 双子にはたくさん伝えたいことがあると思ったけど、いざ言付けを伝えるとアイタイという気持ちが先にでてそれ以上特に何も思い浮かばなかったのでそのままグレイスにお願いする。


「じゃあ、それでよろしく」

「はーい。それでは『楓の新しい風』への言付けをお預かりします」

「は?」

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