謝罪せよ
「カエデ、いつまで拗ねてやがる。食うぞ」
「ん」
全員でテーブルに着き、ローザの作った晩餐を頬張る。
「たくさんあるから、カエデちゃんも好きなだけ食べてね」
「凄く美味しいです。私のお嫁さんになって欲しいです」
「俺の嫁だ」
ガークが不機嫌に言う。
「冗談だし。嫉妬する顔面凶器は嫌われるって」
「相変わらず、お前は一言多いな!」
ガークがそう言うと全員が笑う。
食事が終わり外にいるうどんと子供たちが遊ぶのを眺める。お腹いっぱいで吐きそうなんだけど。完全に食い過ぎだし。軽く不思議水を飲むのをガークに目撃される。
何か言うかと思ったけど、そのことには触れずに林檎酒を渡してくる。
「飲むだろ」
「うん」
しばらく林檎酒を無言で飲み何度もガークと目が合う。なんの時間よ、これ。
「……あの蜘蛛の魔物、あれは人だったのか?」
「たぶん」
「子供だったのか?」
「分からない」
「そうか……カエデにはいろいろ聞きたかったが、ギルド長にも止められているからな」
「紙もあるしね」
ニヤニヤしながら言うとガークが鼻で笑う。
「ふん。あれは貴族には効果あるが、所詮庶民の俺が従わなかったことで特に何か起きるわけじゃねぇ。お前が訴えない限りな」
「ズルくね?」
「ズルいのはお前だろ。はぁ、まったくお前は……」
ガークが呆れたように笑いながら言う。
「必要なことはマルゲリータに伝えたし、エミルにも証拠とかいろいろ渡してるから。あ、でもスパキラ剣の話だけはちゃんとするから」
スパキラ剣を鞘から出すとキラキラと光り、嬉しそうなのが伝わる。
「その飛ぶ錆びた剣の話か。どういう仕掛けで飛んだんだ?」
「仕掛じゃないよ、スパキラ剣の意思だから。まぁ、見てて」
スパキラ剣を軽くシャカシャカ撫でする。あまり強くやり過ぎると光のビームを出しそうなので本当に軽くだけ。スパキラ剣はカタカタ揺れるとポワポワと光を放ちだした。どうやらこれはガークにも見えているようで目を見開きながらスパキラ剣を凝視する。
「お前……これは魔剣じゃねぇか」
「え? 魔剣? 意思のある剣って聞いたけど、魔剣って何?」
「お前、ほとんど何も知らねぇじゃねぇか! どうやってここまで生きてきやがった」
「運と根性かな?」
「お前と話していると毎回頭が痛くなる」
ガークがこめかみを抑えながら林檎酒を一気飲みして魔剣について説明する。ほぼサダコと同じ説明で古い剣に魔力が宿ると言われた。サダコは魔剣とは言っていなかったけど。過去にも魔剣は存在しており、それぞれ性質が異なるという。
「へぇ、魔力があるんだ」
私、マジカルパワーゼロなのにスパキラ剣に魔力はあるのは複雑なんだけど。
「どこでこの魔剣を手に入れた?」
「えーと、森で見つけた」
「カエデ、せめて嘘はちゃんとつけるよう努力しろ」
「えぇぇ」
森で見つけたのは本当なのに! 魔剣は高価な物なので盗まれないようにしろとガークに注意を受ける。
「錆びたままにしておけ」
「それなら大丈夫だって。ガーク、スパキラ剣持ち上げてみて」
ガークがスパキラ剣を握り止まる。その後、血管が浮き出るほど力を入れているのが見えたが……スパキラ剣は全く動かなかった。
「錆びてるくせに生意気な剣だな」
ガークがそう言うとスパキラ剣が赤くなり、ガークがすぐに手を離す。
「おい! なんだ、今のは。すげぇ熱くなったぞ」
「ガークが怒らせるからじゃん。スパキラ剣に謝って!」
「お前……」
その後ガークにスパキラ剣に謝罪してもらい再び林檎酒を飲む。スパキラ剣の話で盛り上がり、途中カイの話も出た。カイはガークがきちんと迎えを出したそうで無事保護したらしい。正直それ以上、今はカイの話に興味がない。たぶん、カイに対してまだイラついているのだと思う。ガークが言うにはカイは賊についての情報を提供した後は一旦マルゲリータ預かりになるそうだ。
「ギルド長は純粋に人の可能性を信じているからな」
「ガークは?」
「今後のカイ次第だろ」
たくさん酒を飲んで話をしてガークとその家族と別れ、宿に戻ってベッドにダイブした。これ、明日起きられる?
「ギンが起こすだえ~」
「ありがと。ギンちゃんお休み~」
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