マルゲリータと 2

 それから遺品は全て返してもらった。マルゲリータには、ロワー出身でない冒険者の詳しい情報は知らないと言われた。冒険者の身辺調査なんてやらないだろうし……とりあえず、遺品はギンに仕舞う。

 マルゲリータに例のフラワーモンスターの話をすると、重要な報告は早くしろと凄い怒られる。えぇぇぇ。


「他に妖精が視える人を知らないし」

「ああ、確かにそうなりますね。この話は他の方は確かに不審に思われますね」

「でしょ?」


 マルゲリータが視線を下げ、困惑したように言う。


「彼らが視える方々は過去にお会いしたことはありますが、どの方もとても清らかな心の持ち主でした。今回の件は、そんな方々が脅されている可能性があるのかもしれませんね」


 ジト目でマルゲリータと自分を交互に指を差しながら言う。


「例外がいんじゃん」


 マルゲリータが満面の笑みを見せると目にも見えぬ動きで背後に移動される。怖い怖い。後ろ振り向けない。背後からの圧が怖いって!


「訂正しましょう」

「いや、もうそんな脅してくる人が清らかな心な訳がないじゃん」

「一理ありますね。大人げなくしてごめんなさいね」

「いえ、別に」


 マルゲリータがやけに素直だ。冒険者ギルドじゃなくて自分の家だから素が出ているん? これが本来のマルゲリータなのかもしれない。

 ロワーの街に関わることなので、このことは一応ガブリエルにも報告するとつもりだと言われる。でも、ガブリエルを含め妖精を信じる者は少ないので、マルゲリータはどこまで真実を言うかは決めていないそうだ。


「心配はいらないわ。ガブリエルもカエデさんには手出しできないことは理解しているから」

「領主と結構仲が良くてびっくりした」

「ええ、その昔、ガブリエルは私の弟子でしたので」

「へぇ、そうなんだ」


 それから、マルゲリータと今回の騒動の妖精と魔物の融合された赤い魔石の話、それを取り込むとゾンビに変わり賊はそのゾンビを操る手段があったことなどを伝える。マルゲリータの顔が話を聞くにつれ険しくなっていく。


「これは困りましたね……情報が多すぎて整理ができないだけでなく、私の力ではできることが限られております。カエデさん、ミュラン伯爵の他に王都の冒険者ギルド長宛に手紙を書きます。何か問題が生じたら彼はとても頼れる方です」


 んー、なんか面倒な話に巻き込まれているような気がするけど……カエデちゃんは日本に帰りたいだけなんだけど。一応マルゲリータの手紙を受け取りギンに収納する。


「あ、そうだ。これ、ガークの手紙」


 マルゲリータは中身を確認しながらチラッと私を見る。


「ミュラン伯爵の書状の件は私からガークに伝えますね」

「あ、はい。ありがとうございます」


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