マルゲリータと

 自分と同じ道を辿る冒険者を内心では止めたいと思いながらも、冒険者が冒険をすることを止めることも出来ず何組ものパーティを死の森の奥に送り出しているとマルゲリータがため息を吐きながら言う。

 マルゲリータのその姿はなんだか送り出した冒険者たちに対して終わらない懺悔をしているようだった。


「……実は死の森の中で白骨遺体を発見してて」

「何故、それを早く言わないのかしら」


 マルゲリータの圧が凄い。そんなの、今まで話に上がらなかったからに決まってるじゃん!


「近いって」

「あら、ごめんなさい。それで、何を持って来たのでしょうか?」

「なんで私が何かを持って来た前提なん?」

「カエデさんなら持っているのでしょう?」


 いや、持っているけど、私がなんでも追い剝ぎをしているような雰囲気を出すのやめて。ギンから湖の近くの白骨遺体から集めた物を出す。

 短剣、装飾された剣、筒に入った手紙、ボロボロの地図、指輪や腕輪などの装飾品、それからヘルメット。水の魔石のネックレスそれから証拠品の多頭の蛇の剣は出さなかった。これはたぶん、相談するのはマルゲリータじゃないと思う。多頭の蛇に関してオスカーがあそこまで過敏に反応していたので、これはオスカーに相談という名の押し付けをしよう。

 マルゲリータがギンから出した遺品を全て確認する。


「当時の彼らが持っていた剣や短剣まで記憶にありませんが、この地図はギルドにある物の写しで間違いないですね。断定はできませんが、これらの物の年代から無慙なる剣の遺品の可能性が高いです」

「そうなんだ……」


 遺品の持ち主が分かればいいと思っていたけど、マルゲリータの背中からは罪の意識の感情がひしひしと伝わった。こういう場合にどう声を掛けていいのか、アラサーになっても良く分からない。ギンがマルゲリータの回りでジャンプしながらアピールすると微かに光ったのが分かった。


「あら……この子はキノコの形をしていたのですね」

「ギンが見えるん?」

「ええ。ここまではっきりとは初めて見えたわ」


 マルゲリータは今までギンの形までは見えてなかった。たぶんギンが妖精としてまだ力がないと思っていたけど……ギンちゃん、着々と成長してたんだね。ギンをしばらく眺めたマルゲリータが筒に入ったカビの生えた手紙を渡しながら言う。


「これに関してはところどころ読むことは困難ですが、領地を約束している内容ですね。この紋章は半分切れていますが、グリフォン、ラシャール公爵家の紋章です」


 オスカーの実家か。受け取ったカビの生えた手紙を見る。確かに羽根っぽいのは見えるけど……。


「コカトリスかもしれないじゃん」

「そんな紋章を持っている貴族はおりません」


 なんかコカトリスがディスられたような気がする。最近、仮面のせいでコカトリスには愛着が湧いてんだけど。


「カエデさん、これはミュラン伯爵に相談なさい。あなたでは不安なので伯爵宛に手紙を書きますから、持って行きなさい」

「あ、はい」

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