カタツムリの奇行

~オスカルゴ・ミュラン伯爵のナニオイテ、カエデ・セトを庇護下にオク。カエデ・セトへの非礼はミュラン家・ラシャール公爵家へのブベツとし処罰スル~


 は? 何これ? オスカルゴってオスカーだけど……何、これ。別で受け取った手紙を読む。何かごちゃごちゃ書いてあるオスカーの王都での話は飛ばして重要なところだけ読む。


 カエデ、生きてイルのナラバ王都にイル俺にアイに来てくれ。あのポーションだと俺にワタシタ物について尋ねたいコトがアル。コノヨウニ承諾もエズに済まない。他にシュダンがなかったのだ。リカイしてくれ。他のキゾクには何もコタエル必要はない。モンダイがあればこの書状をミセヨ。詳しくはテガミには残せない。怒らないでクレ。王都でマツ。


 別に帰還の情報集めのために王都にも行く予定だったし、オスカーとそこで会うのは問題じゃない。でも、この賞状みたいなのは一体なんなん? オスカーに貰った短剣と同じグリフォン印、それから剣に蔓が巻き付いた印が二つも押してあるんだけど。紙自体も高級そうで、怖い。承諾を得ずに済まないって何? 説明なしでいろいろ進むのやめて。最近、そういうのばっかりなんだけど。


「これはなんですか?」


 目の前にフェルナンドに賞状ならぬ書状を見せながら尋ねる。


「これはミュラン伯爵と契り結ばれたことを証明する書状である」


 オスカーと契りって? ちょちょちょちょ! ちょ! 


「そんなこと知らないって!」

「うむ。やはり、事情があるようだな。オスカルゴ様にもお考えがあるのであろう」

「ど、どんな考えが? こんなの困るんだけど」

「伯爵本人に尋ねなければ私とて分からないが、一先ず、この書状のおかげでカエデの奇妙な魔法や謎のポーションのことを我らに問う資格はなくなった」

「え? そうなん?」


 フェルナンドがこの書状で私はオスカーの庇護下にあり、オスカー以外の貴族が干渉できない状態になっているらしい。手を出せば、それは伯爵家と公爵家を敵に回すことになるので、大体の貴族は払えるらしい。


(そう考えると、ナイスなアイテムじゃん)


 特に平民だと他の貴族や権力者が干渉しないように契りを結んで取り込む場合があるという。通常は両方の承諾があって結ばれるらしいけど、どうやら私が一年不在の間に勝手にやられたようだ。酷くね。そんなの無効じゃね。

 絶対に別のやり方があるじゃんと思ったけど、女性だと誘拐して強制的に自分の物にしようとする輩がいるらしいので必要な制度だとフェルナンドに論された。


「そんな輩はボコボコにすればいいじゃん」

「世の女性の大半が其方のように暴力的ではない」


 あ、今フェルナンドに軽くデスられた気がする。


「これは惜しいな。ミュラン伯爵と契りを交わしていなかったらフェルナンドの後添えにぴったりなのだがな」

「あ、兄上! 突然何を」


 フェルナンドがすんごい嫌そうな顔で言う。別に私もフェルナンドのことなんて毛ほども恋愛感情ないけど、その顔は酷くね?


「冗談である。お前のそんな顔を見られただけでも良い収穫だ。さて、話は以上だ。カエデ・セト、ロワーを救った貴女をこの地にいつでも歓迎する。また会える日を楽しみにしている」


 そう言ってガブリエルはマルゲリータとともに謁見の間を去った。マルゲリータには普通に話があるんだけどな。明日でもいいっか。

 オスカーの契りの件は本人と話さないとどうにもならなそう。あの親指野郎、待ってろよ。

 それからフェルナンドに領主邸の門まで送ってもらう。


「いつ出立するのだ?」

「王都? 未定ですが、ガーザには数日中には向かおうと思ってます」

「そうであるか。カエデの生存を知らせる手紙はすでにオスカルゴ様に向かっている。早急に王都に向かうことを勧める」

「あ、はい……出来るだけ早く向かいます」


 無駄に仕事が早くね? バッタとか賊の襲撃とかの最中だったじゃん!

 ユキに跨りフェルナンドと別れる。


「ユキちゃん、宿に行こうか」


 宿に到着したのだが、今日はバッタ関係やダンジョン関係で満室だそうだ。踏んだり蹴ったりだ……。

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