拾い物
そもそも吸う魔力がないじゃん! 足首に付いた金色の金属はよく見れば赤色の魔石も付いていた。うげぇぇ。
「お前もあいつらのように化け物にしてやる。魔力が多ければ他みたいに壊れはしないだろ。だが、その前にそのペンダントをどうやって手に入れたのかを言え」
は? ここに来てまたネックレスの魔道具の話をするん?
「預かり物って言ったじゃん。なんでネックレスのことを何度も聞くん?」
「嘘を吐くな。どこで手に入れた?」
「なんで?」
暗いが後ろでガークが蜘蛛ゾンビに苦戦している。ユキが放った氷柱の攻撃も楽々と避けているようだ。
マルクスが先ほどからなんどもチラチラと懐に視線をやっているのが分かる。またナイフ? マルクスに切り掛かると小瓶を盾にしたのでスパキラ剣を止め、数歩ジャンプして下がる。
「ネックレスは誰から預かった?」
「人」
「……お前がおかしいのは分かった。すぐにその減らず口を縫ってやるぜ」
「石バンバン」
石の攻撃がマルクスの足に命中。時間を置かずに追加の石バンバンで追い打ちすれば、膝を突きながら肩を揺らすマルクスは何かを口に含み一気に飲む。ポーション?
一気に片を付けようとスパキラ剣でマルクスを刺すと勢いで一緒に地面を転がる。口の中に入った土を吐き捨て、地面に転がりまた何かを口に含もうとするマルクスの首を絞めスパキラ剣を上げると、斬り落とした腕の傷口の異変に気付く。
「治ってるじゃん」
以前オスカーの足の親指を切り落とした時と同じように、マルクスの腕の傷口が塞がり始めていた。
(これポーションの効果……なん?)
マルクスが左手に持っている物を見れば水の魔石だ。これ、もしかしたら不思議水じゃね?
「まだそんな元気があるのか。よっぽど高い魔力を……待て、何故、光っていない」
首から掛けていた紐に通した数本の棒みたいな物を見ながらマルクスが目を丸めて驚いているが、この棒は何? 数本の棒の内、一本だけが強く赤く光っているけど。
「何、これ?」
「どういうことだ……魔力が集まっていない? いや、まさか」
ああ、そういうことか。詳しいことは知らないけど、あのアクセサリーからこの棒に魔力を集めゾンビを操ってんのか。
フッと笑う。今日ほどマジカルパワーゼロに感謝した日はない。
「うんうん。気づいた。私、マジカルパワーゼロだから。今度は私が質問する番、この水の魔石って死の森にある湖の水なん? なんだっけ……『奇跡の泉』だ。それなん?」
「はっ。やはりそうか。あいつが生きてやがるのか。貫かれて死んだと思ったが」
「ん? あいつ?」
貫かれて死んだ……こいつ、もしかしてあの湖の近くの遺体のことを言ってんの?
気になるけどこいつを生かすほどは気にならない。マルクスの首を片手で締めたままスパキラ剣を上げると、花火のような光が空に放たれたのが見えた。
「どけ、小娘が!」
一瞬空を見上げた隙にマルクスに蹴られ地面を転がる。すぐに起き上がりマルクスの居場所を探すが辺りは暗い。頭に付けていたヘッドライトも乱闘の時に取れてるし。マルクスはどこだ。また隠れたん? この暗い中、どこにいるか分からない。
「カエデ~、それそれ」
ギンに言われて初めて手に何かを持っているのに気づく。これってマルクスが首から掛けていた棒の付いた紐じゃん。さっき蹴られた勢いで持ったまま千切れたのか。
これがこの足首のアクセサリーと直結しているのならば……使えるんじゃね?
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