マジカルパワー
マルクスが叫び出す。ん? 余計なこと?
斬り落とした長身ゾンビの首を確認……少しの間、ピクピクと動いてたがボロボロと崩れ落ち、魔石の取れたチョーカーだけが残った。チョーカーをトングで拾いマルクスに見せる。
「これのこと?」
「何をしたのか分かっているのか……」
いや、何かしたのは自分じゃん。そう言ってやろうとする前に、私とマルクスの方に走り出した長身フードゾンビをガークが落ちていた地面の剣を拾い半分に切る。ナイス、ガーク!
上半身だけになっても動く長身フードにスパキラ剣を槍のように構えそのまま投げる。スパキラ剣が心臓部分に突き刺さると、背中から飛び出した赤黒い魔石がヘッドライトに照らされて砕け落ちるのが見えた。赤黒い魔石が壊れると長身フードゾンビもボロボロと崩れ始める。地面に散らばる魔石を凝視する。不思議水で浄化もしてないのに……これ、キャパを越えで砕けたん? ううん。今はそんなこと考えている時間はない。
「スパキラ剣!」
呼べばすぐに飛んできたスパキラ剣を握るとそのままマルクスに切り掛かる。マルクスは子供を盾にしてスパキラ剣を防ごうとしたが、構わず子供と共にスパキラ剣を振りマルクスの左腕を斬り落とす。
「ぐわぁぁぁぁ。クッ、お前――クソがっ」
苦しむマルクスに止めを刺そうと剣を振り上げると足元でカチっと音がした。地面を見れば先ほど斬ったはずの子供が足を引っ張る。ちょっ、何これ、完全にホラーじゃん! 足首を見ればあのお揃いのアクセサリーが巻き付いていた。
「えぇぇ。何、これ」
足を握る子供を蹴ると木にぶつかってカクカクと立ち上がった。フードは完全に取れ、黒く禍々しい全身を覆う血管がドクドクと脈を打つのがこの暗さでも分かった。四つん這いになり木の上に昇って行く子供の動きはまるで蜘蛛のようだ。
「おい! なんだ、あれは!」
ガークが裏返った声で叫ぶ。
「たぶん、ゾンビ?」
「待て待て、カエデが言っていたぞんびというものとは全く違うじゃねぇか。あんな蜘蛛の魔物だとは聞いてねぇ!」
「ガーク、これ」
ギンから出した剣をガークに投げる。持っている剣は曲がっているので使い物にならないだろう。子供好きのガークに蜘蛛を任せてマルクスに剣を向けると、手を叩きながら喜んでいた。
「カエデ、手間かけさせやがって、これでお前も終わりだな」
「何が?」
「足首のそれだ。感じるだろ魔力が吸われるのを、もうすぐ俺なしには息もできなくなる。魔力が多いほど苦しみも大きい」
「えぇぇ、これ、そんなことができるんだ」
じゃあ、やっぱりあの最初に石バンバンで死んだ女性は意思に反して動かされてたのか……胸糞悪いなぁ。今日はなんだか感情のコントロールが上手く出来ない。
「オハギが怒ってるだえ~」
オハギが怒っている? これってオハギの感情なん? そういえば、迷いの森でもミールの感情に左右されたことがあった。オジニャンコは赤黒い魔石を悍ましいと言っていたから、その感情? 分からないけど、マルクスの顔を見るとイライラが募る。ギンにヨシヨシされると少しは落ち着くけど。
「そろそろ苦しくなり始めただろ、息できないお前が俺に土下座して嘆願するのが楽しみだぜ」
マルクスはそう言うが、全く苦しくない。魔力なんか吸われてる気配は――
(あ、カエデちゃんはマジカルパワーゼロじゃん)
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