お茶会の予感
バッタ討伐は、オジニャンコのおかげでとりあえず終了……たぶん。オジニャンコの宣言通り双眼鏡で見渡す限り、生存しているバッタは見当たらなかった。オハギは背中で丸くなって完全に惰眠を貪っている。これ、いつ起きるんだろ。起きろとツンツンと突けば、オハギから寝言が漏れる。
「オハギが倒す……の!」
一体なんの夢を見てるのやら。オハギが起きたらたくさん聞きたいことはあるけど、ちゃんとした答えはもらえなさそう。オハギもオジニャンコも自由だし……。
何が起こったのか理解できずに困惑する冒険者や私兵も多かった。でも、バッタが殲滅されたということは理解したようで歓喜の声を上げ喜んでいた。私もバッタの群れはもうずっと見なくていいや。
冒険者の傷の手当をしていたガークに尋ねる。
「このままロワーの街に戻るん?」
「俺はここに留まる。数人はすぐに動けるような状態じゃねぇしな」
賊のこともあるし、家族のことも気になっているはずだけど……ガークは全然そんな感じを見せることなく淡々と冒険者の怪我の処置をする。
時刻は17時25分、辺りは暗くなり始めている。
私がここで他にやることもないし、銀級のタグの存続もあるので早くロワーの街に向かおうと思ったけど……夜間に走れば野原は蟲だろうしな。もう虫はお腹いっぱいなんだって! 今日は泊まって早朝に出発するか。私兵に冒険者とロワーの街への賊とかの知らせは向かってるし、バッタ竜巻やモンスターフラワーの計画はすでに阻止されているし大丈夫、だよね?
「ガークは街にいつ街に戻る予定?」
「後ほど合流する私兵の中隊長の状況、それからここにいる冒険者の怪我の次第だな」
エミルたちか。今ここにいる私兵はエミルの中隊の一部だそうで、賊が紛れ込んだ話はすでにガークより伝えられひとりひとりの顔の確認も済んでいるそうだ。私は台車をぶっ飛ばしてきたけど、怪我人を抱えたエミルがここに到着するのはたぶん明日だよね。
「ん。私は明日、早くにここ出るから。あと……賊の目的ってロワーの街だったと思うんだけど」
冒険者の手当てを終え、手を拭くガークも頷く。同じ意見のようだ。
「ローカストの群れの動きは明らかにおかしかったからな。人の仕業っていうのは予想が付いている。クソみたいなことしやがって」
ガークが静かに怒りを抑えながら言う。モンスターフラワーの話をするかどうか迷う。だって先ずあれが妖精なら人には見えないし……あれ? 人には見えないけどオジニャンコのように強力な攻撃は可能って、妖精最強説じゃん? あのモンスターフラワーがロワーの街に向かって破壊を始めても、妖精の見えない人は原因も分からずに対処のしようもなかったことになるよね? めっちゃデンジャラスじゃん。
「街には多くの騎士や私兵、冒険者もいる。まぁ、それにギルド長やフェルナンド様もいるからな、心配はしてねぇよ」
「うん……」
「なんだ、急に静かになって」
ガークに妖精の話をしようとしたが、他の冒険者に呼ばれてその場を離れてしまう。嫌だけど、この話は妖精の見えるマルゲリータにするしかない。嫌だけど、他に妖精見える人を他に知らないし。めっちゃ嫌だけど。
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