お宝……

「これどうやって中身を取り出すんだろう」


 魔道具に物を入れたことはあるけど、取り出したことはない。


「カエデにはギンがいるだえ~」

「うんうん。ギンちゃんが一番だよ」


 ギンが木箱にやきもちを焼くのが可愛い。

 箱を開ける。中もオスカーの収納の魔道具と同じようにただの木箱だ。うーん。裏返して揺らしてみるが何も出ては来ない。木箱に石ころを入れればスッと消えていった。収納の魔道具で間違いはなさそうだ。お宝が入っていればラッキーだね。赤黒い魔石が入っている可能性もあるけど……


「手を入れてみるか」

「だえ~?」


 恐る恐る指を木箱に挿入するとスッと中に入っていって見えなくなった。すぐに一度指を出して安否を確認してみるが大丈夫そう。もう一度指をゆっくり入れると徐々に中へと進み、腕の半分まで位置まで浸かった。


「凄いマジカルボックスなんだけど……」


 肘まで入ると手が何かに当たった。フワフワな毛? 動物の毛皮? 毛を掴み引き上げる。木箱から出て来たものに悲鳴を上げ、即座に手を離す。


「ぎゃああ、人だし!」


 誰よ、これ。ツンツンと男の頭を棒で突くが、反応はナシ。首には乾いた血が付着しており、どうやら刺されてすでに亡くなっているようだった。この収納の魔道具には、ギンの収納のように時間を止める機能はないのか、遺体は状態から最低一日は時間が経っていると思う。

 小箱からダラリと出た上半身裸の男を引き抜く。出てきたのは眉から鼻にかけて大きな古傷が付いている、下半身の下着以外は裸の男。手を合わせサメの横に並べ小箱に手を突っ込むと、新たな別の男の遺体が出てきた。こちらはもの凄く拷問されたかのように全身に酷い傷があり、顔も認識できないほどだった。たぶん、死後数日は過ぎていると思う。腐臭のする男に流石に耐えれず、胃の内容物をぶちまける。即座に辺りにいたバッタが吐しゃ物を食い始め、更に吐いてしまう。


「きついって!」


 まさか、これ遺体収納箱じゃないよね? お宝は? もう一度手を入れれば、今度は武器や食べ物に金品が出てきた。これで木箱の内容物は全部かと思えば、最後に数人の姿絵が描かれた紙が出てきた。そのひとつに見知った顔を発見する。


「あ、フェルナンドじゃん」


 絵姿の一人にはバツの印が付いていた。サメたちから狙われているターゲットの絵姿? フェルナンドもだけど絵姿の他の人たちもそれなりの地位がありそうな威厳のある顔をしているように見える。 


「サメ、もしかして賞金首かも」

「首、切るだえ?」


 スパキラ剣もカタカタと動く。やめて。収納が可能なのにわざわざ首を斬り落とす必要はない。それはサイコパスがやる事だ。私はそうでは――決してそうではないから!


「ギンちゃん、食べ物以外を収納できる?」

「収納するだえ~」


 木箱以外がスッと消えていく。ギンは木箱を嫌だと拒否、収納してくれなかった。


「ギンちゃん……そこまで嫉妬しなくていいのに」

「嫌だえ~」


 苦笑いしながら木箱をバックパックに入れ、食べ物は全て穴に埋める。流石の私も出所不明の食べ物を使うのは嫌だ。何が入っているか分からないし。


「オハギたちに合流するか」

「だえ~」


 双眼鏡でオハギたちの向かった方向を確認する。バッタ竜巻は見えるけど、かなり遠い。






**

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