バッタ殺す
ガークはなんか戦闘狂みたいになっているので殺気を放つ赤毛の男の話はとりあえず保留、コカトリス仮面を被り一番奥のバッタ竜巻へと向かった。
――ガンガンバシングチョ
走り始めてからずっと響き渡るコカトリス仮面にぶつかるバッタの音……幸い、身体はユキが前方に出した氷のシールド的なものでバッタ交通事故は大分防がれている。精神的なダメージはグサグサと削がれる。
「バッタうるさいって!」
奥のバッタ竜巻に近づくにつれ自分の思考が定められないレベルでバッタが羽根を鳴らす騒音がする。少し離れたバッタの少ない場所へ到着するとユキが足を止める。少ないといってもそこら中にバッタはいる。ユキが氷柱で辺りにいたバッタを一斉に駆除、氷箱で私たちの回りを包むと辺りの騒音はだいぶん軽減した。助かった。
「これで少しは自分の考えてることが分かる。ありがとう、ユキちゃん」
ユキとうどんがフェンリルドリルをすると、バッタの千切れた手足や羽根が飛んでくる。ぐへぇぇ、やめて。うどんが自分に付いたバッタを噛みながら遊ぼうとするのを止める。
「やめて、やめて、これゾンビバッタだからって、痛っ」
うどんから取り上げた頭だけのバッタに手を噛まれたので引き離すと勢いで赤い目が取れ、傷口から体内に入って行った。ぎょぇぇぇぇ。
「嘘でしょ! ちょっと!」
急いで傷口から掻き出そうとしたけど時すでに遅し。え? もしかしてゾンビコース? しばらくソワソワと氷の箱の中をうろついたけど、何も起きなかった。
「これ、嫌な匂いがするの」
「臭いだえ~」
ギンとオハギが転がったもうひとつの赤いバッタの目を見ながら鼻を摘まみ言う。
「でも昨夜は同じもっと大きい赤い魔石が出たのに何も言わなかったじゃん」
「あれも臭かったの! でもこれはもっと臭いの!」
「もっと臭いだえ~」
「え? もしかして私も臭い?」
今まで何度も赤い魔石を吸収してきた。自分の匂いを嗅ぐ。バッタ臭っ。
「カエデは大丈夫なの」
「カエデはいい匂いだえ~」
「二人ともありがとう」
とりあえず不思議水をバッタの目から落ちた赤い魔石に掛けると昨夜と同じように小さな爆発音が聞こえボロボロと崩れていった。他の落ちているバッタを調べると、全てのバッタの目が赤い魔石だった。昨晩ガークが見せてくれた最初のバッタの目は緑色だった。これ、やばくね?
毛繕いを始めたユキはこの状況を相当嫌がっている。私とユキのメンタルのためにも、もうさっさとバッタを殺そう。全部燃やして殺そう。オハギの黒煙で燃えない魔石は全部不思議水を掛けよう。そうしよう。
「バッタと赤い魔石を撲滅するぞ!」
変なテンション叫びながらやる気を振るい立たせると、ユキ以外の全員が賛同する。
「撲滅なの!」
「撲滅だえ~」
「キャウン」
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