学習とは
ガークが黒煙の巻き添えにならないように冒険者に遠く離れるよう指示を出す間、カイと言葉を交わす。
「やっぱりカエデだ。死んだと聞いていて……」
「ああ、それね。全然生きてるから」
「あの、俺――」
「カイ! お前、何をやってやがる。早く来い」
遠くから命令口調で怒鳴りながらカイの言葉を遮ったのは二十代前半だろう赤毛の細マッチョの男だ。仲間の数人となんだかジロジロと不躾にこちらを見る男たちにユキが歯を見せる。
「何、あいつら」
「あ、あれは……その今短期でパーティを組んでいる『処刑台の執行人』だ」
「ダサ――あ、そうなんだ」
なんかまともなパーティ名ってもしかして存在しない? 処刑台の執行人とかもう冒険者の仕事じゃなくね?
「カイ、早くしやがれ!」
再び遠くから大声で催促する赤毛の男にカイが頭を下げる。カイ……どう見てもまたしても仲間の選択を間違えてるじゃん? どうしたん? 前の事件から何も学んでいないカイを呆れながら眺める。
「呼ばれてるから、また後で」
「カイ――頑張って」
赤毛の男の元に走りペコペコと頭を下げるカイにため息をつく。もうカイも十分大人だ。自分の選んだ道を歩むしかない、それが明らかに怪しそうな道でも……。もう一度深いため息をつきながら独り言をもらす。
「カイ、阿呆だな」
「阿呆だえ~」
肩に乗ったギンがベニそっくりの口調で言うのが懐かしくて目を細める。
「うんうん。阿呆だね~」
「カイか? ああ、あの連中と最近つるんでるな」
冒険者を安全な位置まで後退させ戻って来たガークが隣で同じく呟く。
「あれ、よくない連中なん?」
「いや、急にロワーの街に現れたパーティだが依頼の成功率はほぼ完璧だ。ただ……」
「ただ何?」
「なんだか癇に障る奴らだ」
「そうなんだ」
確かに私も好きな雰囲気ではないけど、冒険者のほとんどがあんな感じじゃん? クズがクズの中に埋もれていても分からない。ガークの言葉を頭の端に置きながら土ホリホリファイアー作戦を実行に移す準備をする。準備といってもコカトリスの仮面を着けるだけだけど。
「またその仮面か」
「うん。だめ?」
「いや、似合っているぞ」
「ガークの顔面凶器ほどじゃないけどね。一気にやるからガークも離れて」
「お、おう。頼んだ」
遠くに走るガークをジト目で見送りながら、一人深呼吸をする。辺りはところどころ無作為に設置された松明が灯され、ジリジリと聞こえるバッタの大合唱だけが聞こえる。ユキは完全に部外者のように遠くに離れゴロンとうどんと地面で横になった。キラキラと光る二匹はもの凄い目立つ。くっ、ユキちゃんめ。
「ギン、オハギ。二人とも準備いい? 一気に終わらせるよ」
「レッツゴーだえ~」
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