マジック
「なんか酷くね」
「てめぇも同じことを言ってるだろ」
「えぇぇ」
「それよりさっきの黒煙はなんだ」
あ、やっぱり見えてたか。ワンチャン暗くて黒煙は見えなかったに賭けてたけど。あの黒煙はオハギの……魔法? なんだけど、妖精の説明してもどうせまた可哀想な子を見る顔をされるだけなんだろうな。んー、無難な説明でいいや。
「マジック」
「は?」
「マジック」
「は?」
「マジッ——」
「マジックマジックうるせぇ」
「えぇぇ」
ガークが般若のような顔で怒鳴る。本気で怖いんだって、その顔。
「本当のことを言え。あれは闇の魔法か?」
「あ、そんな魔法があるん?」
「人族ではいないがな」
ジロッとガークに睨まれる。これはちゃんと誤解とかないと変な方向に話がいきそう。カエデちゃんは人族です。この世界の人間ではないけど、ヒューマンです。
「違うって。ちゃんと人間だし。今のは……実は妖精の魔法」
「……言いたくねぇならいい。どうやって黒煙を出したかしらねぇが、お前みたいに間抜けな魔族がいるとも思えない」
「間抜け……」
この世界には魔族もいるん? まぁ、妖精やホブゴブリンだっているから、そりゃ別に魔族がいても驚きではないけど。
「魔族って存在はよくないものなん?」
「そういう訳ではないが……実は俺も魔族とは一度も会ったことないから知らないが、知性が高いと聞く」
「へぇ、そうなんだ」
微妙にデスられてる気がする。というか、ガークの魔族の存在は認めるけど妖精はお伽話ってスタンスなに? 特に魔族の話に興味はないので流す。
「ん。で、今みたいな感じでバッタを討伐すればいいの?」
「あんな広範囲の土魔法に黒煙を何回も放てるのか?」
魔法ではないけど、今まで魔石で限界があったのは攻撃する時の衝撃で手と腕が痛くなったからだ。吸う分には別に何もダメージはない。サダコの手袋のおかげで魔石を袖にちまちま隠すこともなくなったし。
「全然、マジックだから大丈夫」
「お前……」
「マジック」
「黙れ。他の冒険者と合流するぞ」
ガークがバッタ玉入れをしていた冒険者を全員招集してカエデマジックの話をするが、全員の疑いの眼差しが私に集中してコソコソと嘲笑う声が聞こえた。ですよね、分かる。オハギはその雰囲気が気に入らないようでグルルと唸り脇から顔を出す。
「燃やすのは嘘じゃないの!」
「うん。みんなもオハギの黒煙を見れば黙るから」
本当だったら人前で謎の力を披露したくないがいいが、延々と玉入れ討伐しても時間の無駄だし。
「カエデ?」
冒険者たちの奥の方から聞こえた声の主を辿る。
「カイじゃん」
そこには以前より少し成長したカイがいた。
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