レッツゴーカエデ
ガークと共にバッタ最前線に到着。別に美景を想像していたわけじゃないけど、田畑の続く一帯のところどころに掲げられた松明の柱の周辺にはジリジリ、ギガギガと音を鳴らしながら蠢くバッタたちの影と合唱。目の前に広がる蟲畑……これは結構気持ち悪い。
まだバッタ群生の初期段階だと聞いていたけど、普通にすんごい数がいんじゃん!
風が吹くと充満していた独特な臭いが土臭ささに混じって一気に鼻を襲う。臭っ! 勘弁して! ウッと顔を顰める。
「カエデでも怖気ずくことがあるのだな」
「カエデでもって……」
怖気付いてはいない。生臭いだけだし!
ドンと大きな音が響く。音の鳴ったほうを見れば大量のバッタが宙に舞う。舞い上がったバッタはすぐに冒険者たちの攻撃を受ける。一匹一匹仕留めると準備してあった籠の中に子供冒険者が投げ入れる。
「えぇぇ」
玉入れならぬ、バッタ入れ。ポイポイとどんどんバッタが籠に入り、満タンになれば火魔法使いに運ばれファイアーされる。うーん。なんか効率悪くね? ってかあの作業で私が役に立てる動きが見つからない。
ガークをジト目で見ながら尋ねる。
「で、私は何をすればいいの?」
「土魔法使いのカエデには土を掘り起こして欲しい。奴らは土の中に卵を産む」
別に土魔法使いではない。ガークは冒険者試験の時に私の放った石バンバンで土魔法使いだと勘違いしてるみたいだけど。訂正はいらないよね?
近くにいるバッタを見れば尖った尻を土に突き刺し踏ん張っている。お産卵中だ。
「最悪じゃん」
一回に何匹産んでいるのか知らないけど、これじゃ群れが巨大化するのも時間の問題じゃん。
「ギンちゃん、オハギ、どう思う?」
「ビリビリだえ~」
「燃やすの!」
やる気の満ちた二人をよそにユキは目の前に飛んできたバッタを鬱陶しそうに払う。
「ユキちゃん、バッタが嫌いなん?」
「ヴュー」
ユキは嫌そうだが、うどんはバッタが跳ねる度に一緒に跳ねている。オハギも先ほどからウズウズしている。
うどんが飛び跳ねるのを見ながらガークが笑う。
「フェンリルはやる気だぞ」
「とりあえず、土を掘り起こして卵を殲滅すればいいんだよね」
「ああ、昼間はできない作業だからな」
昼間はどうやら活発になったバッタが竜巻を起こすらしく、これ以上村のある方向に進むのを食い止めるので精一杯だそうだ。
「じゃあ、掘り起こすね」
ギンから土の魔石を受け取り、バッタ畑へと走り出す。
「おい! 待て!」
後ろからガークの声が聞こえたけれどすでに魔石を発動していた。
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