選択肢

 バッタの大きさは手の平サイズだから大丈夫だとマルゲリータが謎の弁解を始める。

 何が大丈夫なん? 一体、何が!

 聞けば群れはまだ発生したばかりで、今はまだ小規模だという。田畑を食い荒らす前に早期に解決したいらしい。


 次の依頼書は森のハデカラットの調査。ミール関係で湧いた鼠共が繁殖したのか、森で一年経った今でも数多くのハデカラットが生息していて生態系が変わっているという。鼠問題の発端である、今は亡きミールの責任は重い。


「パス」


 ハデカラットと聞いて、うどんの耳がピクリと動いたが……鼠はもうお腹いっぱいだから。

 最後の依頼書はダンジョン調査の護衛。ダンジョンもお腹いっぱいだけど……


「この辺にダンジョンがあるの?」

「ええ。ここから半日ほどの場所の半年前ほどに突如現れたダンジョンよ。おかげでロワーの街に冒険者が増えたのですよ」

「そんなことあるんだ」

「他のダンジョンよりやや強い魔物がいるので銅級の上以下は入ることを禁じています。しかし、この依頼だと日数的にタグの更新日までに間に合わないかもしれませんね」


 ホブゴブリン村でも経験したけれど、ダンジョンはトラブルが多そう。上手く日程通りに運ばない可能性高いし。


「この四つから選ぶのか」

「他にも銀級の依頼はありますが日数的に間に合うのがこの四つですね」


 結局チョイスはテロリストスライム、バッタ、鼠かダンジョンなのか。どれも、全くそそられない。

 どれもイヤなのでとにかく迷ってしまう。


「うーん」

「カエデさん、迷っているのなら、是非こちらを検討してほしいわ」


 またテロリストスライムを投げつけて来るのかと思ったけれど……マルゲリータは、純粋にバッタの討伐に向かって欲しそうだ。


「うーん。バッタか……」

「希望する冒険者が少なく、今朝、ギルド員であるガークを向かわせた依頼よ」

「え? ガークが?」


 家族にために冒険者業をやめたガークが動いたのなら、本当に切実な問題なんだよね。

 場所はここから馬車で半日もかからないところにあるそうだ。ユキの足なら1、2時間程度で着くかな?

 どうやら冒険者に人気な依頼はダンジョン関係に集中して、虫退治なんか誰もしたくないのでポイントが高くなっているそうだ。

 一応、ガーク以外の冒険者と領主の私兵もバッタ討伐に今日向かったそうだが……今回は特に大きな群れになる兆候があるようで、蝗害が広まれば飢饉などの心配もあるのでとにかく人を向かわせたいようだ。

 バッタは嫌だけど、正直これが一番、今の条件にマッチした依頼。

 調査や護衛は日数が掛かりそうだし、テロリストスライム討伐なんか始めから頭にない。

 バッタの依頼書をマルゲリータに見せる。


「これにします」

 

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