ピザ屋
冒険者ギルドに到着。
ここまでの道のり、ジロジロと街の人の視線を感じた。はいはい。もうたくさん見ればいい。堂々と街を歩く。
私たちを覚えている数人の街の住民には軽く挨拶程度の声をかけられたので手を振っておいた。ギンも他の人には見えていないだろうが、健気に街の人に手を振っていた。
冒険者ギルド前で以前、酒とムギチャを交換した冒険者とばったり会う。向こうも私を覚えていたようで声をかけられる。
「お、フェンリルの小娘じゃないか。久しぶりだな。死んだんじゃねぇのか?」
「ん。生きてる」
「そうだよな。飲み屋での賭けは俺の勝ちだな。俺は生きてるって信じてたぜ。他は小娘が死んでたのに賭けていたがな」
「勝手に殺すのやめて」
「だよな。まぁ、あとで酒でも奢ってやるから付き合えよ」
「奢りなら」
ムギチャ冒険者が千鳥足でどこかへと向かう。もうすでに酔っ払いか。
「ここが冒険者ギルドなの?」
「オハギは初めてだったね。うん、ここが冒険者ギルド」
「うーん」
背中にいたオハギが降り、ギルド周辺の匂いを嗅ぎ尻尾を揺らしながら戻ってくる。
「大丈夫なの!」
「何が大丈夫なん?」
「敵、いないの!」
「意味がよく分からないけど、ありがとう」
実際は一年ほど過ぎたというけど、外から見る限り冒険者ギルドが変わった様子はしない。
外から中を覗けば、受付にいるのは見たことのない男女の職員。ガークがいれば、マルガリータに先に話を通してもらえそうなんだけど……ガークの姿はここからは見えない。
「裏にいるのかな」
意を決してギルドに入る。もちろん、変な冒険者に絡まれる率が高いのでユキとうどんも一緒だ。
ギルドに入った瞬間、賑やかだったギルド内がシンと静かになる。
ヒソヒソと聞こえるのは、ユキたちの話。
「なんだあれ、狼か? デケェな、おい」
「お前バカか、あれが狼なわけねぇだろ」
ユキもうどんも確かに以前と比べたら大きくなった。最近は、オークの魔石を食べずとも体格が太くなったと思う。特にうどんの成長は著しい。
受付への列は珍しく女性の方が短かったので、そちらに並ぶ。
奥の席にいた見覚えのある冒険者と目が合う。
「あ、あの黒髪の女、以前この街にいたやつだぞ」
「あんな奴いたか?」
「そういえば、お前あん時いなかったな。あいつは一年前くらいにこのギルドで一気に銀級まで昇ったカエデ・タダ――」
「次の方、どうぞ~」
奥の冒険者の声を遮るように受付の女性に順番を呼ばれたので前へ向かう。
女性は、十代後半だろうか? この世界では珍しく小柄で髪も目もくりくりしている。くねくねと動きながら女性が尋ねる。
「初めまして。受付のマリナーラです~。ロワーの街へようこそ~。本日はどのようなご用件でしょうか~」
「うん、とりあえず冒険者タグの有効期間を調べて欲しいんだけど」
「は~い。分かりました~。ここにタグをおいてくださ~い。調べてきま~す」
差し出されたトレーの上に銀級のタグを置くと一瞬だけマリナーラの目が鋭くなる。その眼光に腕に小さな鳥肌が立つ。何、この親近感のある感覚。
「銀級~それも上ですね~。今、調べてきま~す」
「うん。よろしく」
マリナーラの話し方に特徴はあるものの、動きは機敏。いつの間にか目の前から消え、どこかへと行った。
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