そんなぁ

迷いの森の入り口には、行きとは違い一日ほどで到着。また森が変化した? 

迷いの森を抜ける前に一斗缶をギンから出し、妖精たちをまとめていた妖精玉を取り出す。元気にしてたか尋ねると、元気よく全員が暴言を吐き始める。はいはい。


「放せ!」

「嘘つき人間」

「ゴブリン女」


 この妖精たちの解放がミールの最後の願いだから野に放つ予定でいたけれど、そんな義理は別にない。一斗缶にずっと閉じ込めておこうかな……こいつら。


「お前たち、うるさいの!」


 オハギが妖精玉の前に仁王立ちすると、妖精たちは全員プルプルと震えはじめた。やはり、オハギは強力な妖精なんだよね。

 怯える妖精に今後悪戯はしないと脅す形で約束させ、縛っていた紐をほどき解放した。

 妖精たちは得意の捨て台詞も忘れ、一目散とどこかへと飛んで行った。うん。お互いのためにも二度と会わなければいいね。


 数日掛けて、ロワーの街が見える場所まで到着。サダコから貰ったニワトリのお面は、その外見とは違い凄く使いやすいだけでなく、走行中の顔に当たる虫対策にもなった。これを被っている間、何人か冒険者とすれ違ったが全員がギョッとしていた。

 やっぱりビジュアルは微妙だよね。ロワーの街に入る直前に仮面を外し、街に入る列に並ぶ。今日の検問は特別に忙しそうだ。周りからは、いつも以上に不躾にジロジロとみられ、ヒソヒソ話をされるが気にしない。自分の番が近づくと奥にいるゲオルドが見えたので、ユキに乗り手を振る。

 こちらに気づいたゲオルドは、これでもかってくらい目を開け停止した。怖いって!

 正気に戻っただろうゲオルドが持っていた書類を全て地面に落とし、ズカズカとこっちへとやって来る。


「ゲオルド、久しぶり」

「お前! 久しぶりじゃねぇだろ、こら! どこに行ってやがった!」

「そんなに怒鳴らないでって、前に一緒にいた子供を送り届けただけだし。まぁ、少し帰りが遅くなったけど……」

「少しだと! お前の中で一年近くが少しなのか!」

「は?」


 ゲオルド何を言ってんの? 訝しげにゲオルドを見る。


「何か月も戻らねぇお前を、あの連れてた双子やギルド長、それにフェルナンド様がどれだけ心配したと思ってるだ。俺だって心配したぞ」


 ゲオルドの目は真剣で、私はもう死んだと思っていたと言われた。


「本気で言ってんの?」

「こんな話を冗談でするわけねぇだろ。お前は今すぐギルド長のマルゲリータさんに報告に行け。俺はフェルナンド様に報告してくる。お前が現れたらすぐに報告するように言われているしな」


 どうやらこれはゲオルドジョークではなく、真面目な話をしているようだ。1年近くって……あ! あれか、あの爪が伸びた時の衝撃の! あれ、爪や髪の時間だけじゃなくて全部の時間を進めていたん? 待って待って。それなら私、29歳の誕生日通り越して……三十路目前ってこと?


「噓でしょぉぉぉぉぉ」


 ロワーの街の検問所で頭を抱え叫ぶ私の声がこだました。











いつもご愛読ありがとうございます。

少しキリのいい所で少しだけお休みに入ります。

次回の更新は、四月の頭ごろになると思います。


近況にお知らせした通り、一人キャンプ3は4.10に刊行を予定しております。

少しだけの間お休みしますが、来月にはまたよろしくお願いいたします。


トロ猫

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