洗濯、少し楽になる
洗った洗濯物を絞り臭いを嗅ぐ。
「結構綺麗になってるじゃん」
ダリアとバンズは、以前水浴びの際に泉で見せてくれた精霊魔法で服の余分な水分を吸い上げる。服から水の玉が空中にどんどんと浮かんでは地面へと落ちる。
あ! これ、水の魔石でもやってみようと思って忘れていた奴じゃん。
ギンから床下収納で見つけた魔石の袋を出してもらい水の魔石をひとつ手に取る。
魔石は普段使用している物より小さく、水色でなければただの石ころだ。ちゃんと使用できるのか少し不安なんだけど。
まだ濡れている洗濯物を並べ、魔石の中に水を吸収するイメージを固め集中する。
(水を吸え)
手元の魔石が軽く反応、洗濯物から徐々に水が浮いてくる。
「おおおお。何これ、凄くね?」
浮いていた水が渦を巻きながら魔石に吸い込まれていく。
「小さな竜巻じゃん」
ダリアとバンズの精霊魔法は可愛らしい水の玉がプカッと浮かぶのに対して、なんで私のはこう禍々しくうねりながら吸い込まれていくん? こんなイメージしてないし。
水を吸い終わった魔石のメーターを確認するため、人差し指と親指で掴んだ魔石を上にかざす。少し色が変わったけどまだ水は入りそう。
でも、この中の水ってカエデの洗濯汁だよね? 手のひらに中の水を少量出してみる。
「普通に洗濯汁だね」
やや浄水器的な機能を期待したけど、紛うことなき汚水。
これ、どうしよう。ひとまずこの水の魔石はこのまま汚水入れにするか。
魔石を袋に戻す手を止める。うーん。他の石と混ざらないようにしないと、絶対に間違いそう。
不思議水を入れた魔石は大きく、形にも特徴があるので大丈夫。だけど、他の水の魔石は似たり寄ったりで中身の識別ができない。混じってしまえばどれがどれだか分からなくなるじゃん、これ。
いつの間にか洗濯物を畳んでくれたダリアとバンズが声をかけてくる。
「カエデさん、これで洗濯物は全てですか?」
「うん。ありがとう」
洗濯物を受け取りギンに収納。バンズが水の魔石を指差しながら尋ねる。
「それは、いつもの水の魔石より小さい」
「そう。汚水入れにしようと思うんだけど、他の魔石と区別がつかないなって」
チャック付きプラスチックバッグはまだあったかな?
「それなら、ブレスレットにしたほうが良いんじゃないの?」
声がしたほうを振り向くとキョロキョロと警戒しながら辺りを見回すサダコが立っていた。
「サダコ、この家の兄なら畑だよ」
「そうなのね」
あからさまにホッとしたサダコの表情。兄ぃ、警戒されてんじゃん。
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