パン2

「水は任せて!」


 バンズが精霊魔法を使い温かい水を樽に作ってくれる。茶色い粉と汚洗濯物を入れ、樽に中に入り足踏みをする。

 茶色いけど大丈夫……この粉。泡立ちはそこまでよくないけど、足は凄くツルツルになっている。

 洗濯用に使っていた食器用洗剤も底をついたので、洗剤を探したいとは思っていた。この茶色い粉も悪くはないけど、ロワーの街に戻ったら洗濯洗剤を探そう。


「ギンも~」


 ギンが頭の上で真似っこ足踏みを始め和む。可愛すぎる。


 ダリアが精霊魔法で水の玉を作り布を中に入れ手洗いを——


「ってダリア! それ、私の下着じゃん」

「分けてありましたので、こちらは繊細な洗濯かと」


 うん。一つひとつ手洗いする予定で下着は分けてたどさ! 人に自分の汚パンツを洗ってもらうなんて恥ずかしいじゃん。

 ダリアにギュッと握られたパンツを見ながらやや顔が熱くなるのが分かった。

 バンズは、知ってか知らずか背中を向け一生懸命タオルを洗っている。ありがとう。バンズ。


「それにしてもこの下着の生地はなんでしょうか? 伸縮性がありよく伸びますね」


 ダリアが不思議そうにパンツを伸ばしながら尋ねた。


「それ、私の最後の女子パンツだからそんなにビヨンビヨンと伸ばさないで」


 ダリアが握る黒い下着は、偶然ポーチのポケットに入っていたのを発見した最後の女子パンツ。他に持っていた数枚の下着は、この一年でどれも破れ使えなくなっていた。今使っている他の下着は全てオジトランクス。そのオジトランクスもいつ寿命を迎えてもおかしくない。

 ロワーの街には下着屋的な店は見当たらなかった。みんなどこで下着を買ってるん? 


(街に戻った時にシーラにでも聞くか)


 こちらの下着の紐パンは賊の洞窟や古着屋で見かけたが、流石に異世界の使用済みの下着を使うほどその時は困っていなかった。

 ——オジトランクスは新品だったんだと既に自分を洗脳済みだから気にしない。

 こっちにもトランクスあるのか? トランクス、結構動きやすいんだよね。

 そういえば、イーサンはノーパンだったじゃん。もしかしてこの世界、男性は下着つけないん? まさか、ガークも……ダメ、そんな想像やめるんだカエデ!


「このような伸縮性の生地はありませんが、形だけでしたら近い物が作れると思いますよ」

「え? ダリア、本当!?」

「はい。私たちの下着よりは布の面積が少ないですが、これでしたら私やバンズでも作ることができると思います」


 対価を払うからダリアたちに下着を作って欲しいとお願いするが、拒否される。里まで連れて帰ってくれた恩人にそんなことしたら両親にも怒られると言われた。


「なんか、既に色々お世話になっている感じがするんだけど……でも、下着は絶対に欲しいからお願いしたい」

「もちろんですよ。洗濯物が終わり次第、繕いますよ」

「僕もいっぱい作る」


 バンズ……ホブゴブリンは女性の下着とかあんまり気にしないんかな? 別に作ってもらえるなら誰でも構わない。それに二人から見たら私はヨチヨチの赤ちゃんなんだろう。


「二人ともよろしく!」









**

二巻、本日発売です。

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