サップの魅力

 ユキとうどんが左右二手に分かれる。

 ユキが右に分かれたあと、鼠ボールを避け来た方向に引き返す。

 鼠ボールは傾斜を転がっていたはずなのに、即座に方向転換、ダリアとうどんではなく一直線にこちら狙いで上ってくる。


「えぇぇ。あれ意思があるん?」


 そのまま転がって、どこかに行って欲しかった。

 色んな方向をユキが走って逃げてみたが、執拗に鼠ボールに追いかけられる。


(なんで、こっちばっかりくるん?)


 ユキが今までにない猛スピードで走り鼠ボールから一旦遠くまで距離を取り急停車。


「あああ。待って~!」


 久しぶりにユキの上から地面へと転げ落ちる。下が草で良かった。

 ユキが振り向き鼠ボールに向かって大型の氷柱を放つ。氷柱はボールの中心に刺さり鼠ボールがやや崩れ停止する。

 鼠ボールが停止している間も地面から湧いて出てくるハデカラットが次々と足元に襲いかかる。ユキではなく全て私に。


「ちょっと! なんなん、これ!」

「ヴュー」


 ユキがまるで舌打ちしたかのように唸り近くにいたハデカラットを一掃。安堵したのも束の間、ユキに押し倒され上から乗られる。


「え? ユキ? 何するん? あ! やめて!」


 ユキから服を問答無用に食い引きちぎられる。抵抗も虚しく、あっという間に服はビリビリに破かれスポーツブラとパンツ一丁になる。

 ペっと地面に破いた服を吐き捨て、一仕事を終えたかのように清々しい顔のユキ。


「ユキちゃん……どうして?」


 ユキが顎で地面に落ちた服を指す。

 引きちぎられた散らばった服にはハデカラットが次々と群がり、先ほどまで襲ってきていたのが嘘かのように、もうこちらには見向きもしない。

 ああ、そう言うことかよ! あのかけられた液体のせいか!


「あのクソ妖精、殺す!」


 拳を上げ立ち上がったのは良いけど、今の私の格好……スポーツブラ、ヨレヨレのパンツ、剃ってない脚の毛——


「変態じゃん!」

「カエデ、カエデ、コレコレ」


 興奮したギンに渡されたのは、靴下だけを履いた裸体写真……エロ本の1ページじゃん。

 ギン……エロ本の全ページ内容を把握してるの? やめて。


「ギンちゃん、エロ本はいいから服をお願い」


 ギンから受け取った服を着る。服、破れてばっかりじゃん。普通に高いのに、また買い直さないといけない。

 ハデカラットの集団は、鼠ボールからも集まり未だに服に群がってる。


「どうするよこれ?」


 放置でも良いけど、また襲ってきても嫌だし……


「燃やすか?」


 木々のある森の中じゃないし、草原も乾燥していない。燃やしても問題ないよね?


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る