コリンたちの借家

 冒険者ギルドを出て、前回依頼で訪れた徘徊ジジイの家の横を通る。

 チラリとジジイの家を覗くが、今日はノージジイ。

 伝言だと、コリンたちの借家は徘徊ジジイハウスから数軒先にある。


「ここだね。結構大きいじゃん」


 借家は平屋建ての庭と広いデッキ付き。デッキの椅子に座るのは——


「ジジイじゃん」

「カエデさん、今日会う知り合いですか?」

「ううん。あれただの徘徊ジジイだから。ダリアもバンズもあのジジイと関わらないように」


 人の家で勝手にくつろぐ徘徊ジジイ無視して、扉を叩く。

 中から出てきたのは、賊に捕まっていたコリンのキャラバンのひとりの女性。


「カエデ様! お久しぶりです!」

「えーと」

「ふふ。私はアリスです。コリン隊長に会いにきたのですよね?」

「うん、そう」


 コリンは今、用事で出かけているが、すぐ戻ると家の中に案内される。

 家の中は質素な内装だけど、必要な物は揃っているようだ。リビングでくつろいでいた覚えのある数人の男女が駆け寄ってくる。捕まっていた他のキャラバンメンバーだ。

 キャラバンメンバーは全員、捕まっていた時より小綺麗になっていて表情も穏やかだ。

 あの時は対して興味がなかったけど、こう見るとロアーの人々とは違う顔立ちが多い。

 ソファに案内され、飲み物と蒸しパンが出される。

 お腹も空いていたし、蒸しパンを一口食べる。あ、これ甘いじゃん。

 ダリアとバンズが蒸しパンを一口食べ、一気食いする。


「この水パンだっけ? 砂糖入ってんの?」

「これは、甘い芋を練り込んで作ったものですね」

「そんなの市場にあった?」

「どうでしょう? 商業ギルドの直営店から買った芋ですが……市場とは別の商品も多いですから」

「ん、後でその店行くから場所教えて」


 ギンも蒸しパンを欲しがったので、肩の上に蒸しパンを置く。

 ギンはこれ食べれる?


「水パンだえ~」


 嬉しそうに蒸しパンの上に登ったので、大丈夫かな?


 ギンの見えない人からは、奇行にしか見えないだろう。周りにいたキャラバンメンバーに不思議な顔をされる。


「ん?」

「い、いえ。相変わらず、私たちの恩人は不思議な方です」

「だめ?」

「そんなことないです。私も水パンを肩に乗せます」

「そんなことしなくていいって!」


 ダリアたちはいつのまにか水パンのお代わりをもらっていた。迷いの森に行く前にこの甘い芋も手に入れたいね。

 キャラバンメンバーと雑談していたら、コリンが帰宅した。


「コリン! 来たよ」

「カエデさん! ようやく会えました」

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