銀級のタグ
「ギルド長、失礼します。銀級のタグの準備ができました」
「ご苦労様」
助手がマルゲリータに銀級のタグが乗ったトレーを渡す。
「タグは良い出来ね。カエデさんは追加討伐でこちらの魔石を納品しましたので、検品後に報酬とそれから銀級の上に昇格をお願いしますね」
「こ、このような数の源の魔石をお一人で? 流石最短で銀級、いえ、銀級の上まで昇級する実力ですね」
「そうなのよ。期待の星でしょう?」
マルゲリータが、子供を褒めるように助手にいう。
助手が退室すると、目の前に銀級のタグが乗ったトレーが置かれる。
銀色に輝くタグを手に取り眺める。
「タグが銅級より大きい」
「そうですね。銀級はより目立つ存在になりますから。特別感と言いますでしょうか。タグは大きく作ってあります」
「へぇ」
別に目立つ必要性を感じないけど、牽制にはなるのかな?
この辺の冒険者は、ユキたちの存在と土下座事件で滅多に手出ししてこないけど、別の地域に行ったら面倒臭いのが湧くんだろうな。今だって、変な二つ名つけられていても平気で柿の事を言う奴はいるし。
マルゲリータが、思い出したかのように、追加説明をする。
「銀級の上になりましたので、依頼期間の失効猶予は1年となります」
「凄いじゃん」
「1年ですが、失効直前を待つより出来るだけどこかで依頼は受けてくれるよう切に願います」
「時間があって、スライム以外だったら」
銀級の依頼を見てから決めるかな。
失効を避けるには、その階級の依頼を受ける必要があると説明された。銅級の依頼も受ける事は可能だが、ポイントは付かずお金だけだという。
隣に座るダリアとバンズが暇そうに欠伸をする。結構な時間ここにいる。カエデちゃんも、もう退室したい。
「そんな顔をしなくても、以上でお話は終わりですよ」
「そ、それなら帰りますね」
「魔石の報酬は受け取らず帰りますか?」
「あ、はい」
それから紅茶を再び注がれ、マルゲリータと沈黙のお茶の時間を15分ほど過ごす。15分が恐ろしく長く感じる。
やっと助手がスライム魔石の報酬を持ってきたので執務室を退室する。
暫く来たくないな、ここ。
ダリアがこちらを見上げ尋ねてくる。
「カエデさん、宿に戻りますか?」
「ううん。コリンを尋ねたいかな」
「分かりました」
「報酬も手に入ったし、ギンに入れてるお宝が売れれば、ある程度スペース空くから黒芋もたくさん持てるかも」
パッとバンズの顔が明るくなる。
二人の分け前もゴブリンの耳集めのおかげでそれなりにある。黒芋以外の物もたくさん買えそう。
持ち物を入れるスペース作りたいので、賊のお宝は早く荷下ろししたい。
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