ガークへの報告
「肉、食わせてないのか?」
「食べさせてないんじゃなくて、野菜しか食べないんだって!」
「そうなのか?」
「「はい」」
ガークが、ダリアとバンズの返事を聞き納得する。同じこと言ってんのに!
「それで、この数。同じ場所……土の中と言ったな」
「そう。やっぱりちょっと多いよね?」
「……はぁ。ちょっとどころじゃないだろ! 普通の銅級が狩ってくるゴブリンは、多くても一日10体前後だぞ! これ、いくつあんだよ! 200か? 300か?」
「耳の数、まだ数えてない」
深い深いため息の後、袋の耳を全て出しながらガークがゴブリンについて説明してくる。
今回、私が狩ったこの種類のゴブリンは、数年に一度、不定期にオーバーフローと言う大量に湧き出てくる現象が起きると言う。
ゴブリンの生態の知識とか、もういいって!
「この量なら、巣は壊滅だろうが。よく生きて帰ってきたって話だ。本来なら帰ってきてすぐ報告すべきだがな。一応聞いておくが、巣のゴブリンは全部始末したのか?」
「土の中で冬眠(?)してたゴブリンは知らないけど、襲いかかってきたのは大体片付けたかな。それに、巣は崩壊して埋まったから。何匹か逃げたけど、そんなに大量じゃなかったかな」
「あとで場所を教えろ。冒険者を調査に向かわせる」
ガークがゴブリン耳を物色。何か探しながら、尋ねてくる。
「ないな。雌はいなかったのか?」
「マミーがいた」
「……マミーってなんだよ。雌は毎回形態が違うが、大体大きな個体だ。耳も大きい」
「マミーの耳ならあるよ」
毎回形態が違うって、なにそれ。本当に迷惑な生物じゃん。ベニの言う通り害獣だよ。
ギンから工作を頑張ったゴブリン耳標本を受け取る。マミーは、ほぼミンチにしたが、耳は少し千切れただけだったので二つとも回収していた。大きい耳だったので、看板の真ん中に二つとも並べて釘で固定している。この躍動感溢れる耳の位置選定。天才だね。
ガークに『じゃーん』と効果音を口に出し、耳標本を披露する。
「……なんだこれ?」
「ゴブリンの耳標本。ある程度形になってないと耳を買い取ってくれないって聞いたから。40匹分だけど、ここの真ん中の大きい二つがマミーの耳」
暫くの間、ガークが耳標本を眺め諦め顔で尋ねてくる。
「パパマイロ。肉屋の看板か?」
「そうそう。要らないって言うから貰ってきて作ったんだけど、どうかな?」
「狂気の沙汰だ」
「えぇぇ」
ガークに貸せと言われ、マミーの耳だけ釘を抜かれる。超大作が! ひとしきりに耳を観察した後にガークの口が開く。
「相当な大きさだな。耳の所々の箇所がチグハグで新しい肉が盛り上がってる部分があるな。再生の能力か?」
「せっかくダリアたちと頑張ったのに……」
「子供になんてことをさせやがんだ!」
そのあと、ガークに巣の中で起こったことを、ダリアたちの詳細を伏せて正直に報告する。
ガークが報告内容のメモを取り終え、耳を数え始める。
「ゴブリンの耳は367個だな。雌は別だが会計と昇級の話は、明日また来い。ギルド長に報告する」
「分かりました」
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