ちゃんと食べてるから

「あー、もうお腹いっぱい。二人はどう?」

「とても美味しかったです」


 二人ともかなりの量を食べる。食べるのは、全て肉より安い野菜だし、お財布への打撃はそんなにないからいいけど。

 特にバンズの幸せそうに食べる姿は、小動物のようでかわいい。


「この後、冒険者ギルドでゴブリン耳の換金に行くけど、ついてくる?」

「僕、行きたい」

「ダリアは?」

「私も興味あります」


 3人で冒険者ギルドの受付に向かう。イーサンが冒険者に復帰した事で、新しい受付が入ったのか、初めて見る青年が女性と二人で受付に座っている。

 相変わらず、女性の方には鼻の下を伸ばした男性冒険者が並び、青年の方には誰もいない。

 青年の方に向かい、ゴブリン討伐の報告をする。青年の対応は、新人のマニュアルって感じ。ぎこちないけど丁寧。イーサンの受付時代とは大違いだ。


「ゴブリンの討伐依頼完了お疲れ様でした。耳の確認をしますので、提出をお願いします」


 受付のテーブルにギンから出した耳の袋を二つドンと出す。


「よろしく」

「へ? あの、これは?」

「ゴブリンの耳」

「全部ですか!? いくつあるんですか!?」


 驚きを隠しきれない受付の青年が袋を開け、小さな悲鳴を漏らす。量が多いのは分かってた。数えてくるべきだったけど、どうせ受付でも数えるからいいかなと思った……。


「ごめん、まだ数えてない。今から数えようか?」

「いえ……あの……少々お待ちください」


 青年が奥の部屋に向かうと、すぐにガークが出てきた。ガークに手を振ったが、私の姿を見るなりため息を吐くのが見える。酷い!


「……またカエデか。今度はなんだ? ゴブリンの耳の量と聞いたが……なんだこの袋は?」

「ゴブリンの耳です」


 袋を覗いたガークの表情が険しくなる。怖いって!


「どこにこの量がいた?」

「森に行く前、ガークに教えてもらったところからそんなに離れてない場所にいたよ」

「そんな近場にこの量がいたなら……報告があるはずだが?」

「土の中にいたからじゃない?」

「……サット、残りは俺がやる。この話は他には言うなよ。カエデ、お前は俺と部屋だ」

「えぇぇ」


 早く来いと言われたので、3人で個別部屋に向かう。


「なんだ、その子供たちは?」

「ダリアとバンズです。いま——」

「誘拐したのか?」

「……預かってるんだってば!」


 全員して最初に言う事それ?

 ガークに座れと言われたので交渉テーブルの席につく。

 ガーク、凄い子供慣れしていると言うか……子供にすごく優しい。ダリアもバンズも実年齢は年寄りだが、すぐにガークと仲良くなった。カエデちゃんにはすこぶる厳しいのに! 酷くね?


「二人は、小さいな。ちゃんと食ってんのか?」

「僕、黒芋をたくさん食べたよ」

「芋だけか?」

「あと人参も」

「肉は?」

「肉は食べない」


 ガークにジト目で見られる。待って! その子たちベジタリアンだから! 私が食べさせてないみたいな目で見ないでって!

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