だから言ったのに
「おはようございます」
「おう! ウルフ娘か」
肉屋に到着。ウルフ娘扱い。この町に来てからいろんなあだ名つけられすぎじゃね?
「カエデです。この前買った肉が美味しかったんで、また来たんだけど。今日は、何が新鮮?」
「今日は……。そこで待ってろ。裏に今朝仕入れた奴がある」
肉屋が裏から持ってきたものは、赤いステーキ肉と白い肉——
「カエルじゃん!」
「美味いぞ! 赤い方は魔物のカーガルだ。このまま焼くだけでもクセなく肉も柔らかいぞ」
牛ガエルより大きな皮の剥がれた白い肉。その脚を持ちながらぷらんぷらんと揺らす肉屋。カエルの串は普通に美味しかったし。イケる? ビジュアルが変わればイケるよね?
「カエル、ぶつ切りにお願いします」
「綺麗に掃除しておくぜ。カーガルもいるか?」
「はい。あとロングバードとブラッククローラーとオークも!」
「おう。すまんな。今日は、ブラッククローラーはない」
残念だ。双子もブラッククローラーを楽しみにしていたのに。
ユキのオークチェックも終わり、全てを購入。大量だ。ユキとうどんにオークの塊を投げる。
「一瞬で食ったな。合わせて銀貨1枚と銅貨2枚だ」
肉屋に代金を払い、無造作に置いてある板を発見。
「あれ、何?」
「看板だが、古くて取り外した奴だ。後で燃やす予定だ」
「いらないなら、お金払うから譲ってもらえるかな?」
「あれに金? 欲しいなら持っていけ。こっちも手間が省けて助かる」
肉をギンに入れ、看板はフルフルされたので脇に挟み宿まで持って戻る。看板には薄くなった字で、『パパマイロのニクヤ』と書いてある。あの肉屋、マイロって名前?
途中、串やパンも購入。チラチラといろんな人の視線は感じたが、特に気にしなくなってきた。
宿に戻ると、食堂で双子を待つイーサンに看板と顔を交互に見られた。
「なんだ、それ」
「パパマイロの看板」
「そんなの見ればわかる」
ん? イーサン、今日はどことなく不機嫌? そういや、昨晩はデートしてたはずなのに、なんでこんなに早くから双子を待ってんの?
「イーサン、今日は昼頃から稽古って聞いたけど、迎えが早くない?」
「ああ……」
イーサンが、ばつが悪そうに頭を掻きながら答える。頭を掻く手——
「あ! イーサン、せっかくアドバイスしたのに……きゅうり持参しなかったでしょ?」
「……ああ」
頭を掻く手には、無数の掻き傷が付いていた。絶対やられると思った。
ギンが、タイミングよく出したきゅうりを一口食べ、イーサンを慰める。
「イーサン、次回、頑張れ」
「うるせぇよ」
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