朝食の調達

「おはよう! って二人は寝ていないんだよね?」

「はい。でも、横にはなっていました」


 双子は、まだ夢の国。

 ダリアとバンズの妖精二人は、寝なくても平気だそう。昨晩は、変に怪しまれないよう寝るフリだけよろしくと伝えてあった。


「いろいろと旅の準備をする時間が必要だから、迷いの森への出発は数日後になりそうだけど、大丈夫?」

「僕は大丈夫だよ」

「人の集落には、つい最近来たのばかりなのに……。いろいろ変わっていて緊張はしてますが、大丈夫です」

「そんな最近に来てたの?」

「はい。30年ぶりでしょうか」


 つい最近が30年ぶりって……。妖精の時間のスケールよ。


 今日は市場に行きたい。冒険者ギルドでゴブリン討伐も報告をしないと。お金いくらぐらいになるかな? 耳は、いくつあるか全て数えてないけど……千切れた奴もカウントしてくれるのかな?

 ギンに損傷のある耳を出してもらう。千切れた4等分のゴブリン耳が現れる。

 

「ギンちゃん、これ、同じ一匹分なの?」

「だえ~」


 ゴブリンの耳をパズルのように組み合わせる。ギン、凄い。これ、本当に同じ1匹分だ。

 千切れたり、損傷した耳を全て出してもらうと全部で40匹分あった。耳の全てのパーツが揃っているわけではないけど、いけるかな?


「ある程度くっつければ、いけるよね?」

「だえ~?」


 40匹分だと銅貨20枚分。報酬の一部は、耳集めなど協力したダリアたちに分けるようだ。二人は、お金に執着はなさそうだが、旅の前に町でいろいろ揃える物もあるし。お金は大事。


 半起きのミロに声を掛け、ダリアとバンズと共に市場に向かう。朝食の調達だ。

 妖精は睡眠時間なくとも平気らしいが、食欲はそれなりに旺盛。昨晩の蒸し芋と人参は、余裕でペロリと平らげていた。


 市場の八百屋に到着。野菜などの食べ物は定額で、大量に買ってもさほど財布にダメージはない。


「欲しいものなんでも言って」

「僕、昨日の黒いお芋がいい」


 バンズは、昨日の黒芋を相当気に入ったようだ。八百屋の店員は、私のこと……と言うよりユキたちのことを覚えていたようで声を掛けてくる。


「あら、アンタ。この前の子ね。きゅうりも人参も美味しいのが揃ってるわよ。今日は、何が欲しいんだい?」

「以前の黒芋の奴ある?」

「気に入ってくれたのかい。あるよあるよ。ちょっと待ってね」


 奥から黒芋を麻袋に大量に持ってきた店員。これで、半銅貨だと言う。もちろん買う。その他にオススメのきゅうりや人参。それから菜の花のような野菜に瓜、葉野菜と赤い大根を買う。ほとんど前回買っていた野菜なので味は大丈夫。


「肉屋にも行くね。ユキたちの餌もいるし」

「芋は僕が持ちます」


 別にギンに入れること出来るけど……。バンズが頑なに黒芋を持つと言うので、お願いする。


「重くない?」

「大丈夫」


 苦もなく芋袋を持ち上げるバンズ。意外と力持ちなんだね。




 




 

 

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