カエデの信用度

 ユキでの移動は、恐ろしく速い。

 あの馬車に揺られた時間はなんだったのか? 直ぐにロワーの町が見えてきた。

 途中、遠目で行きに乗った定期便の幌馬車が冒険者を乗せて森方面に走っているのが見える。馬車の上で昼寝してる冒険者がこの位置からでも見える。あの揺れでよく寝れるね。それに、夕方前でも森に向かう冒険者がいるんだ。


「ダリア、バンズ、休憩いる?」

「大丈夫です」

「そう? 無理してない?」

「僕は、ちょっと休憩したい」


 だよね。私もちょっとお尻が痛い。

 ユキたちから降り、ストレッチをする。時刻は14:30。泉を出発して三時間走りっぱなしだった。ユキとうどんに不思議水と持っていた最後のオークを与える。オークをまた肉屋で買わないと。

 

 休憩後、再びユキたちに乗りロワーの町に到着する。

 門に入る列に並ぶ。視線は、ユキたちのみに集中、ダリアとバンズを見る者は殆どいない。彼らは、本当、普通に人間に溶け込んでいる。

 門番には、見知った顔がいたので元気よく手を振る。


「ゲオルド!」

「お前か。お? なんだ、その子供たちは? まさか……」

「変な勘違いやめて。この子たちは、ダリアとバンズだよ」

「親は?」

「えーと……預かってる?」

「なんで、疑問系なんだよ」


 邪険な顔で見てくるゲオルドだが、ダリアたちの事情を正直に話す事は出来ない。設定を考えるべきだった。適当に切り抜けよう。

 なんと言おうか悩んでいたら、ゲオルドがダリアたちに個別で事情を聞く為に、隣に設置された門番の部屋に連れて行ってしまう。

 少しして戻ってきたゲオルドとダリアたち。

 ゲオルドにこっそりと耳打ちされる。


「子供たちから事情は聞いたぞ。通っていいが、お前……あれ、貴族の子供じゃねぇだろうな?」

「え? 違うよ」

「なら、良いが。厄介事は起こすなよ」


 ダリアの言葉使いは、丁寧で見掛けの十歳前後には思えない。実際は、百歳を超えてるなんて誰も思わないだろうね。


「ゲオルド! ありがとう!」

「俺は、なんでお前がそんなに子供と魔物に懐かれてんのか甚だ疑問だけどな」

「なんとなく?」

「……いいから、早く免状を払え」


 二人分の免状代、銀貨二枚を払い、門を通る。ゲオルド、最後はあっさり通してくれたね。

 町に入り、宿に向かう途中でダリア尋ねる。


「ゲオルドになんて言ったの?」

「親からカエデさんに預けられていると伝えました。疑われたのですが、数日後に親と合流する予定だと言うと理解してくれました」


 ゲオルド、きっと私が同じ事を言っても信じなかっただろう。ブーブー。とりあえず、上手く町に入れてよかった。


「ダリア、お見事。それにしても、お腹すいたー。早く宿に戻って何か食べよう!」

 


 

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