妖精が有能すぎる件

「それで、二人はこれからどうする?」

「集落に帰りたいです」


 うん。家に帰りたいよね。カエデちゃんも、お家に帰りたいです。ずっとお家に帰りたいです。

 二人の話から察するに、ホブゴブリンの集落は、避けていた森に東側に位置する。あの地図上黒く塗り潰された迷いの森だ。

 今いる場所は、西側だけど……迷いの森までは数日掛かる距離かなと予想する。

 正直、迷いの森へは行きたくない。タチの悪そうな理不尽妖精の巣窟なのは、ほぼ確定な場所だし。


「カエデ~」

「うっ。ギンちゃん……」


 すこぶるギンのおねだりに弱い。ため息を吐き、二人を迷いの森まで連れて行く事を了承する。ベニは、ギンがいれば迷いの森も大丈夫だと言ったけど……不安は残るが……


「連れて行くのは良いんだけど、一度、町に戻らないと」


 数日間の旅準備もだけど、双子には三日以内に帰ると伝えていた。町には、一度戻る必要がある。

 そこで問題なのが、ダリアとバンズの容姿。町に行くにならば、二人にも同行してもらわなければならない。

 ゴブリンを散々見てきた私からすると、二人は一切ゴブリンには見えないのだが……二人の肌の色や顔の感じは人間の町では異質だ。


「それなら大丈夫です」


 ダリアがそう言うと、ボヤけたように全身が光った。


「え? 何それ!」


 ボヤけが引くと、ダリアの顔が普通の人間の子供になっていた。バンズの方も同じエフェクトで、人間に変身?する。なに、このマジカルな変身術。


「隠匿の一種で、妖精の特技です」


 ダリアの顔を摘んでみる。感触も形も全てが人間の子供のそれだ。そういえば、ゴキちゃんズもカメムシに変身していた。それと同じ? じゃあ、ゴキちゃんズも人型になれたの? 顔は人、体はゴキを想像して急いで脳裏から掻き消す。恐ろしい。


「あの、痛いです」

「あ、ごめんね」


 ダリアの顔をまさぐっていた手を離す。妖精有能すぎ。これなら、問題なく町に入れそう。

 ダリアたちに暫く感心していたら、ギンが両手を上げ抗議する。


「うん。もちろん、ギンが一番だよ」


 ギンを撫で、町に戻る準備をする。洗った服は、まだ乾いてない。生乾き……微妙。

 ダリアが任せてと、水の精霊魔法で服に付いていた水を吸い上げる。服から水の玉が空中に浮かび地面に落ちる。服を触ると、きちんと乾燥していた。


「凄すぎじゃね?」


 ダリアが照れ笑いをしながら、乾いた服を着る。

 これ、もしかして水の魔石でもできる? 不思議水入っている魔石は使えないけど、小さい水の魔石がログハウスで見つけた袋に入ってた。後で試してみようっと。


 ダリアをうどんに乗せ、バンズとユキに乗る。


「じゃ、町に出発!」

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