アドバイス

「「カエデ! おかえり!」」

「ミラ、ミロ、ただいま」


 宿の前で剣の稽古帰りだった双子とタイミングよく会う。

 双子の視線が、脚の後ろに隠れるダリアとバンズに集中する。


「カエデ、この子たちどうしたの?」

「森で拾、助け、預かって来た」

「「そうなんだ!」」


 双子が純粋で助かったが、双子の後ろにいるイーサンはそんな戯言信じないと言う表情だ。

 イーサンに『久しぶり』と挨拶をする。


「数日前に顔を合わせたばかりだろ。それより、また子供を拾って来たのか?」

るんだって」

「ゴブリン討伐に行ったはずなのに、子供を預かったとは奇妙な話だよな?」

「僕、お腹すいた」


 ナイスだ! バンズ!

 イーサンも、これ以上深く聞けない雰囲気なってる。話を上手く逸らせそうだ。


「双子は、食事したの?」

「「まだ! お腹すいた!」」


 時刻は、17時過ぎ。今日は、宿の食堂で食べようと思うけど、二人はベジタリアンなんだよね。何か素材は余ってたかな?

 ギンが、残っている野菜の人参と黒い芋を出してくる。この黒い芋……市場で買い物した時、ついでに買わされたやつか。忘れてた。

 食堂に、二人が食べれるメニューがなかったら、また台所を借りるか。


「イーサンも、一緒に夕食してく?」

「あ、いや、俺は、その」


 ん? 何? 歯切れ悪い。それに、今の会話のどこに照れる要素があった? 

 凝視していたら、イーサンが軽く咳払いをして口を開く。


「今日は、実は——」

「イーサン、今日、シーラさんとデートなんだよ!」


 ミロが、大声でイーサンがシーラとデートする事をバラす。

 言いかけた言葉を引っ込め、イーサンは辺りを見まわしながら、ミロに声を抑えろと注意する。

 シーラさんとのデートか。そりゃいろんな人から羨ましがられそう。私もデートしたい! シーラさんとね。


「それなら仕方ないね。みんなでの夕食はまた今度だね」

「ああ。双子をよろしく頼む」


 双子がダリアとバンズを連れ、宿に入っていく。あの二人、本当、人見知りがないよね。ダリアとバンズの方が不安な顔をしてたよ。


「じゃあ、イーサン、デートを楽しんでね」

「ああ。そうする」

「あ! そうだ。アドバイスなんだけど、絶対きゅうりを持参した方がいいよ」

「また、きゅうりの話かよ。なんできゅうりがいんだよ」


 だって、いい感じになったら絶対邪魔してくるよ、あの顔が目のアニマル。しかも、あれのテリトリーはメロン付近だよ。

 イーサン! 勝つには、きゅうりしかないんだって。


「絶対いるから! 絶対」

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