穴
洞窟の中から雨を眺める。ここの洞窟、入り口から行き止まりが見えるほど、奥行きはない。
ユキとうどんは丸まって寝ていて、ギンは玉の上で根を張っている。
「暇じゃん」
雨は結構降っているが、にわか雨だと予想。ゴブリン狩りどうしようかな。これだと足元の心配もある。
今回は、ゴブリンの駆除だから何匹でもいいっていう話。常時置いてある駆除依頼のようで申請せずにゴブリンの耳を持ち帰るだけの仕事だ。一匹半銅貨、3ポイント。一匹、五百円くらい?
ログハウスの周辺のゴブリンはそんなに耳が長いイメージじゃなかった。この周辺のは長いらしい。種類が違う?
「ゴブリンの生態とかどうでもいい」
本来依頼を達成しなかったら、ペナルティを受けると聞いた。現在、既に六点減点されてる。悔いはないけど。
「あ! 雨が止んだ!」
「止んだだえ~」
「ギンちゃん、起きた?」
雨はやはり、にわか雨。
それでも短時間に随分と降った。
止んだのは良いが、足元のコンディションは最悪。
ユキが顔を上げクンクンと空気の匂いを嗅いでいる。
「ユキちゃん、何かいた?」
背中に乗れとユキが背中を向け催促してくる。
躊躇したが、しがみつくとユキが一気に駆け出した。待って!
うどんも負けじとついてきているが——
「痛い痛い痛い」
散々枝やらが顔に当たる。三十分ほど走った所でベチャっと雨で濡れた地面に投げ出される。
髪も顔も全身泥まみれだ。
「……ユキちゃん?」
ユキも、今回ばかりは叱らないと! と思ったが——
「何? 何かあるの?」
ユキが背を低くして茂みの方に向う。
茂みから見えるのは、大きく穴の空いた地面。
穴は、空いてから時間が経ってないようだ。未だに所々が崩壊中だ。
穴の中からは、グギャグギャと汚い声がする。いたいた。やっとでゴブリンを発見。
どうやら、土の中が巣のようだ。先程の雨のせいか、元々土が緩くなっていたのか、巣の一部の天井が崩れたようだ。
ゴブリンいたのはいいけどさぁ! カエデちゃん、あの穴の中に入りたくないんだけど!
どうにかして、出てきてもらおう。持っていた兎肉を穴の側に投げる。
ゴブリンが穴から這い上がろうとする音がするが、どうやら上がってくる事はできないらしい。それなら上から撃ち殺せばいいよね?
穴を覗くと、ゴブリンが数匹上がってこようとするのが見える。
「結構深い……」
これじゃ、ゴブリン上がってこれないじゃん。
下にいるゴブリンは、やはりログハウス周辺のゴブリンよりも耳が長く、小さく弱く見える。
攻撃的なのは同じだけど。涎垂らして、相変わらず餌だと思われているのが腹立たしい。
「石バンバン」
石の弾丸で、見えていたゴブリンを殲滅する。
あれは、回収できなさそう。降りたら登ってこれなさそう。これは、どこかに入り口があるはずだよね?
入り口探そうと回れ右すると、足元が崩れ、穴に落ちる。
嘘でしょおおお!!!
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