ねぇ。ゴブリンどこ? ねえ!

 森の浅い場所には、年若い冒険者が薬草を集めている姿がチラホラと見える。カイと同じ年齢の子達かな? 体格は大きいが顔が幼い。

 薬草取りの冒険者もこちらに気づいたようだ。


「ヒィ。狼」

「ノー。フェンリルです」

「ヒィ。フェンリル」


 なんか、子供冒険者たちが怯えている。無視してさっさと通ろう。

 ガークに教えてもらったゴブリン出没エリアに到着したが、ノーゴブリン。

 できれば、奴らの汚い面など見たくもない。

 自分の利益の為に耐えるしかない。

 ゴブリンの足跡らしき物はあるが、これは多分数日前のだ。いるのはいるんだろうが……


「ユキちゃん、ゴブリンいそう?」

「ヴゥー」


 ユキが臭いを嗅ぎながら、この辺はいないって顔してる。


「きて欲しい時にこないとか、あいつらすごい役立たず!」


 以前は、ほぼ毎日のように自宅訪問を受けてたのに……。

 仕方ないので、森の奥に進む。

 今日は、日帰りか泊まりか決めていなかった。泊まりになりそうな予感。泊まりでも大丈夫なよう、準備はしてる。

森への滞在はゴブリン討伐の成果次第で、三日以上にはならないと双子には伝えている。宿代は、一応一週間分払ってきた。


 ゴブリンを探す事、更に数時間。


「いないんですけど!」


 すぐに見つかると高をくくったのが間違いだった。ゴブリンがおりません!

 串屋から買った猪肉の串を食べながら、小休憩をする。


「もうちょっと、楽に行くと思ったんだけど!」


 ため息を吐きながら、午後からまたゴブリン探し。あいつら、今日休日なんかな?

 ゴブリン探しに飽きたので、発見した小川でユキとうどんが遊ぶのを眺める。


「大丈夫だえ~」

「ギンちゃん、ありがとう」

「あれ、あれ」

「ん? ギンちゃん、この葉っぱが欲しいの?」


 ギンの指差した葉っぱは、里芋の葉を小さくしたかのような植物だった。葉を切りギンに渡すと傘のように使う。


「ギンちゃん、可愛いね」

「水、降るだえ~」


 ギンがそういった直後、ポツポツと大雨が降り始めた。

 ここに来て雨かよ! こちらの世界での雨はあまり経験がない。ログハウス時代は殆ど降らなかったからなぁ。

 雨露をしのぐ野営場所を探さないとな。ゴブリン狩り、楽勝と思ってたんだけどなぁ。


「ねぇ。ゴブリンどこ? ねぇ?」


 まぁ。こういう日もあるって事だよね。冒険者は断然安定職ではないね。

 今の所は、お金に困ってないが王都に行くとしても身分証はいるからね。

 オスカーの後ろ盾断ったが……いや、あれは断って正解だと思う。何かしら巻き込まれそう。


 ユキの案内で小さな洞窟を見つける。中には何もいないようだ。今夜はここで寝るかな。


 今日のカエデちゃんはついていない!


 

 

 


 

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