サイレントきゅうり

 怒鳴るガークにきゅうりを差し出す。


「おい!」

「真剣勝負って、模擬戦だって。練習の一貫だって」

「練習でも、イーサン相手なら本気でやらないといけないって事だ」

「二人とも、とてもカッコ良かったよ。本当に」


 ガークが少し照れたような気がした。イーサンは、双子から質問責めにあっている。

 ガークに気になっていた事を聞く。


「最後のガークの動き、全く見えなかった。あれは、何をしたの?」

「イーサンなら、ああすると先読みして剣を持ち変えただけだ」

「へー、そうなんだ」


 ボリボリとガークに受け取ってもらえなかったきゅうりを食べる。

 ガークがジト目で見てくるので、再びきゅうりを差し出す。


「これ、最後のきゅうりですからね」

「……貰おう」


 二人できゅうりを食べながら、イーサンと話す双子を眺める。随分と仲良くなったな。


「あの二人は、イーサンに預けるのか?」

「はい。私の戦い方をあの子たちに教えて大丈夫だと思う?」

「それは、駄目だな」

「でしょ? 私、責任とか今背負えないんで。イーサンは、どうやら適任のようだしね」


 イーサンが双子と戯れてる姿が、ベニとゴキちゃんズに重なる。ベニたち元気にしてるかな?

 ギンにヨシヨシとほっぺを撫でられる。ギンは、良く私の感情を汲み取るようだ。慰めてくれてるのかな? ありがとう! ギンちゃん!

 

 それにしても、イーサンは本当に数日で別人のようだ。この前まで、酔っ払って床に転がっていた人とは思えないな。弟子パワー? あのままだったら、完全に廃人コースだったよね。


「あら。二人で何を食べてるの?」

「シーラか。カエデの奢りきゅうりだ」

「あら、私もちょうど今朝の市場できゅうりを買ったのよ。ピピンの好物なの」


 胸の谷間からモモンガのピピンが現れ、きゅうりが欲しいとせがむ。以前より目が大きい感じがする。黒目が大きくなったのか? 相変わらず、顔が目のアニマルだ。

 シーラは、きゅうりを手で折ると胸に谷間にさした。ピピンは、それをボリボリ食べ始め、シーラも残り半分のきゅうりを食べ始める。

 シーラって、もしかして天然さんなのかな? 絵面が完全にR18なんだけど。

 しかし、ピピンよく食べるな。きゅうりがどんどん減っていく。


「よく食べるね」

「ピピンは、きゅうりに目がないのよ。きゃ。瑞々しくて液が胸に垂れちゃったわ」

 

 いや、言い方よ! きゅうりの汁を拭きながらピピンを撫でるシーラ。ピピンは、食事中に触んなといわんばかりの態度だ。


 三人プラス一匹。

 無言できゅうりのボリボリ音だけ鳴らし練習場を眺める。なんの時間よ。これ。




 

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