迎え

「カエデ……女だったのか?」

「……正真正銘女ですけど?」


 ガークが目を泳がしながら困った顔をしている。ちょっと! 本気で男だと思ってたん? 酷くね? イーサンだって勃たないとか言っていたけど、女だと認識しててくれたよ? ギンが武器を渡してくる。


「待て。何を出している」

「釘バットだけど?」

「待て待て。俺が悪かった。物騒な武器は戻せ」


 ガークが必死に謝罪をしてくる。本心から謝罪だと思うけど……


「ギルド長もカエデって言ってた!」

「ギルド長は、冒険者には全員『さん』付けだ!」


 確かに冒険者登録でも性別は書いてないような気がするけど……見れば一目瞭然でしょ!! この世界の女性は確かにグラマラスなボディでメロンだけどさー。


「酷い!」

「本当に悪かった」

「ヴゥー」


 ユキも抗議の声をあげてくれているのか? 唸っている。うどんは……貸し衣裳の臭いを嗅いでいる。


「女用の貸し衣装部屋に案内する。出発まで時間がない」

「この話は終わってないからね」

「分かっている」


 ガークを睨みつつ女性用の衣装部屋に向かうが、結果は惨敗。ドレス系はどの服も大きすぎるのだ……色々と。靴だけは、小さいサイズがあったのでそれを借りることにする。


「ガーク、このシャツなら少し大きいけど入るから。これとジャケットと男性用のズボンにする」

「カエデは小さいからな。ここには、大人用しか揃えていない」


 貸し衣裳とジャケットを着るとそれなりの格好になった。不安なので、少し化粧をして行く。化粧品は、転移の時に持っていた大した物ではないが、一年以上使ってない割には普通に使えた。


「こう見ると、本当に女だったんだんだな」


 ガークの足を踏みつけながら衣装部屋から出る。靴がヒールだったら良かったのに。

 ギルドの前には、領主から用意された結構豪華な馬車が停まっている。V.I.P待遇じゃない?


「ガーク、領主っていつもこんな馬車出してくるん?」

「いや、いつもより豪華な奴だ。カエデ、何したんだ? 賊だけには、随分と高待遇だな」

「ガーク、ユキちゃんたち乗れないんだけど」

「乗れるわけねぇだろ! フェンリルは置いて行け。見ろ、馬が怖がってんじゃねぇか!」


 馬車の馬は、口を固く閉じて耳を動かしながらギョロギョロと視線が泳いでいる。可哀想だがユキたちを置いて行く予定はない。


「ガークだけ馬車に乗って、後ろから付いて行くから」


 ユキの許可を得て、背中に乗る。以前より、乗り心地が良い。ユキ、また少し大きくなった?


「ああ……もうそれでいい。御者もいいだろ?」

「へ……は、はい。もちろんです」



 


 

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