え?
「カエデ、領主からの呼び出しだ。本日応えるよう」
朝から宿の部屋前にガークが来て告げる。目覚めたばかりで、目を擦りながらガークの話を聞く。
「領主?」
「そうだ。賊の討伐の事だろう。ギルド長がカエデ一人では不安だろうから、俺が付き添うよう言われている」
ギルド長か……ピザ食べたい。
領主は、フェルナンドのお兄さんって事か。フェルナンドは普通に良い人だったが、兄の方はどうなんだろう?
「今日行くの?」
「領主様の呼び出しは、出来るだけ直ぐに応えるのが礼儀だが……その服はダメだ」
自分の着ている服を見る。Tシャツに市場で買ったスパッツのズボンだ。分かるよ。これでは行けないよね。
「こんな感じのしかないんだけど——」
「カエデ~。これだえ~」
ギンに髪を引っ張られ、布を渡される。不思議な事にガークは一切ギンの存在に気付いていない。思い返せば、ギンの存在に気付いたのは、オスカーとギルド長のマルゲリータくらいだ。
ギンに渡された布をピラっと拡げる。おぅ。これは賊のお宝部屋から回収していたクロッチレスパンティだ。
「お前は! 朝からなんてもん出してやがんだ!」
ガークにクロッチレスパンティを奪われ、ジト目で見られる。いや、カエデちゃんチョイスじゃないよ?
「えーと。間違えました。返して下さい」
ガークが、若干クロッチレスパンティを返すのを渋っている。別に履く予定もないから、返さなくて良いけど……
「ガークには、サイズが小さいと思うけど?」
「誰がこんなの履くか! 人前で、簡単に出すんじゃない。女に嫌われるぞ」
クロッチレスパンティを再びギンに収納する。今思い出したが、賊のお宝部屋で血の付いた子供服をギンに収納していた。
子供服を出す。ジャケット部分には血が付いていないようだ。
「これなら、どう?」
「お、ちゃんとあるのかよ。戦利品か? シャツは使いもんにならないが、上のは着れるな。これなら大丈夫だ。残りはギルドで借りろ」
ギルドに向かう準備をする。話し声で起きた双子に、今日は出掛ける事を告げる。本当だったら、今日は三人で依頼を受ける予定だった。簡単な依頼だったら、私がいなくても出来るよね。
「依頼だけど、町で出来る奴をイーサンと相談して受けるで大丈夫?」
「「はーい」」
宿を出てギルドに向かう。ガークに案内されたのは、ギルドの一室の衣装部屋だ。中古の服の臭いがする。
「貸し衣装だから、文句言うなよ?」
「文句はないけど、こんな事までギルドでやってるんだ」
「一介の冒険者が、公式の場に出る服なんぞ買えないだろ?」
そういえば、服高かった。
ジャケット以外のシャツとズボンや靴を探す。
「ガーク、ズボンが全部長すぎるんだけど」
「裾を折り曲げろ」
シャツはジャケットがあるから誤魔化し効くけど、靴は無理。
「ねぇ。女性用はないの?」
「はぁ? 公式の場で女装はダメだろ」
「……え?」
「え?」
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