イーサンと双子とお花摘み

「——と言う事なんだけど、どう?」


 双子にイーサンへの弟子入り? の話をする。弟子入りで良い?

 双子は、明らかに不安な表情で違いに視線を交わす。ミロが何かを考え込んで尋ねてくる。


「カエデと一緒じゃダメなの?」

「正直難しい。二人が嫌とかじゃなくて、自分で精一杯で何かあっても責任が取れない」


 双子が視線をそらし下を向く。

 

「イーサンは、ガークと同じくらい強いの?」


 ミラが拳を握りながら聞いてくる。


「うーん。どうだろう。腕が治ればなかなかの上級者だとは思うよ」

「「うーん」」


 二人のイーサンへの信頼度は低いようだ。


「じゃあ、イーサンの怪我が治って剣の腕を確かめる事が出来ればいい?」

「「う、うん……」」


 二人は、渋々と答える。



 夕食の時間になり食堂に向かう。


「改めて自己紹介する。イーサンだ」

「ミラです」

「ミロです」


 自己紹介後テーブルには沈黙が流れる。

 うん。会話が続かない。

 食事と飲み物が運ばれ、イーサンの酒には今日も不思議水の水増しをする。

 イーサンが訝しげに手元を見ているが、大丈夫でしょ。


「お前……今、俺の酒に何か入れただろ?」

「かんぱーい」

「……まぁ、いい。ミロとミラも乾杯だ」


 今日の夕食は、マンガ肉だ。どの部位を切ればこんな形の肉になるん? 骨部分を持ち上げかぶり付く。肉は柔らかい。


「すみませーん! これ、もう二皿下さーい」

「食えんのか?」

「やだなぁ。ユキたち用だよ」


 足の近くで丸まっている二匹の耳がピクリと動く。

 マンガ肉が運ばれて来たので、二匹に分けてあげる。凄い。骨までボリボリと食べている。


「こいつらの食費だけで、金がなくなりそうだな」

「そろそろ、魔物か動物狩りに行きたいかも」


 イーサンの言う通りだ。毎日市場であの肉の量を買おうもんなら、直ぐに破産する。


ノーマネーノーライフ。


「ちょっと、お花を摘みに……」

「小便か?」


 デリカシーのないイーサンの頭を殴り。トイレに向かう。ここのトイレは、外だ。

 小さな小屋の中に箱がある。それを開けて穴の部分で用を足すのだが……何も触りたくないので、木の棒で箱を開け用を足す。

 とりあえず、臭いし鍵もかからない。外でユキちゃんたちを待機させているから覗きとかないだろうけど……不思議水をウォシュレット代わりに使い、トイレから出て手を洗う。ログハウスのトイレは優秀だった……


 食堂に戻ると、イーサンと双子たちが少し打ち解けたのか? 談笑していた。

 良かった。どうやら、仲良くはなれそうだ。


「少しは仲良くなった?」

「ああ。双子は、俺の腕が治ってから剣の実技で弟子入りを決めたいそうだ。それまで、お前預かりだが無理はさせるなよ」

「庭掃除とかしかしてないし」

「そうだったな」


 夕食後は部屋に戻り、すぐに寝た。

 次の日、ガークから領主からの呼び出しに応えるよう伝言される。




 

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