個人依頼

「「カエデ。終わったよ」」


 剣の講習が今日で最後だった双子が、宿に帰ってきて叫ぶ。


「お疲れ様だったね」

「これで、討伐とかもいけるかな?」

「僕も早くゴブリン退治に行きたい!」


 カエデちゃんは行きたくない。なんで自らあの不細工どもに会いにいかないといけないのか。


「数日、お手伝い依頼してから行こう」

「「分かったー」」


 どうせ、ギルド長のマルゲリータには町に居るようにといわれている。フェルナンドの呼び出し関係? 電話とかなさそうだから、白銀貨の件も伝わるの遅いと予想。

 今日は、お手伝い依頼でもするか。


 トントン——


 ドアを開けると、カイが袋を持って一人で立っていた。


「カイじゃん。やっとで荷物取りにきた?」

「は、はい」


 カイに部屋に入ってもらい、ギンに荷物を出してもらう。これで全部かな?


「遺族とは話せた? 他の個人的な遺品もこの中にあるから、カイに任せてもいい?」

「……えーと」

「どうしたの?」


 聞くと、パン屋の遺族とはまだ話せていないらしい。なんで? 数日あったよね。アリアが躊躇しているらしい。


「カイ。アリアの気持ちは、今どうでもいいんだよ。自分の家族や恋人が帰って来なかったら冒険者ギルドに連絡すると思うんだけど……その時にもう死にましたよって聞いたら悲惨じゃない?」


 カイが下を向いて考えている。アリアのいたパーティは当初の帰還予定より既に数日超えている。冒険者だと数日のズレはあるだろうが、流石にそろそろ不安に思ってるんじゃない?

 煮え切らない気持ちで、未だ考え込むカイに中指デコピンをする。


「痛っ」

「痛くしたし」


 額をさすりながらカイが『なんで?』と言う顔で見てくる。こっちがなんで?なんですけど!

 本来だったら、カイの責任でもない。逃げているアリアの所為だ。だが、カイはアリアに好意がある。上手くアリアのやりたいように誘導されてやがるのが腹立たしい。


「カイ。依頼を出して」

「依頼?」

「そう。遺族に一緒にお話に行く依頼ね。双子も行くから。遺族一箇所につき銅貨二枚ね。今日行くよ」

「一人一箇所二枚!?」

「ユキたちの分をチャージされないだけ、ありがたいでしょ?」


 カイと依頼書を作成に冒険者ギルドに向かう。

 寝ているイーサンにバシャと水を掛ける。


「うおっ!! ってまたお前かよ! いい加減にしろよ! このクソガキ」

「イーサン。おはよう。カイが依頼書出しにきた。後、その依頼受けにきた」

「あ?」


 カイが依頼書を作成する。結構簡単にできる。依頼書には、遺族への故人の報告合計三箇所、一箇所に付き銅貨二枚と書いてある。

 

「出来たぞ。手数料の銅貨二枚と合わせて銀貨二枚払え」

「ポイントは何点?」

「ポイントは3だ」


 一箇所ポイント1の計算? 庭掃除三回分を一日で稼げるのか。


「お前、遺族に失礼を働くなよ」

「なんか、言い方ひどくね?」


 イーサン。昨日酒奢ってやったのに! イーサンは双子に視線を移して続ける。


「忠告だ。精神的にも辛いから、双子も覚悟しとけよ」

「私は?」

「お前は、バスタードソードでも貫けない図々しさがあるから大丈夫だろ」


 イーサンには更に水を掛けた。


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