鼻つまみ者
初依頼も終了して宿に戻り、これからの事を考える。
私の目標は、情報収集と大きな紫魔石の確保だ。日本への帰り道を探す。これが一番の目的。
双子は……孤児院に押し付けられない今、自力で頑張ってもらわないと。とりあえず、銅級に昇進すれば依頼は半月に一回で済む。今日の掃除で一点だから……残り九十九点。私は、次の銅級の上まで残り百九十九点。道のりながっ。銅の上は、月に一回の依頼で済むくらいしかメリットがない。
ある程度、ここでの基盤ができれば、双子は自分たちだけでも生きていけるだろう。
後は、戦利品の売却と、白銀貨のお礼……あれどうなってんだ? フェルナンドに、お金請求しなきゃ。
荷物を整理する。
「ギン、よろしく」
「出すだえ~」
ギンが戦利品を全て出す。あ、これはカイの荷物だ。そういえば、荷物取りに来るといってたのに来なかったね……気にな……そこまで気にならないね。そのうち来るだろう。
「カエデ。何してるの?」
「戦利品の確認だよ。路銀にしたいからね」
「そっか……」
ミラが寂しそうにしている。くっ。ちょっと情が移り始めている。早いとこ、お別れしないと。
戦利品は、金と宝石、装飾品、武器、書類に分けた。この蛇のナイフは、別で取っておこう。
金は、ログハウスや湖に賞金の分を合わせると……金貨五百枚くらいあるんだけど……装飾品売らなくて良くね? でも、ギンの収納の容量もあるのでやはり売るのがいいだろう。
「荷物整理終わったし、食事にするか!」
「「うん」」
今日は、食堂に行く。初依頼なのでお祝いだ。後、普通に調理する気分じゃない。カウンターで、今日のおすすめミートパイを三つ注文する。
「あいよ。銅貨一枚判だ。酒はどうする?」
「酒はひとつ、残りは麦茶で」
「適当に座っとけ」
双子が既に座っている席の隣は——
「イーサンじゃん」
「お! 水かけ獰猛土下座娘じゃねぇか」
「なんか増えてない?」
イーサンは既に数杯飲んでいるようで、ご機嫌だ。今からでも席を遠くに移りたい。
「飲みもん、先に出すぞ」
くっ。飲み物が来てしまった。仕方ないのでテーブルに座る。
隣の席から、ご機嫌イーサンのマシンガントークが始まる。今からでも席を移ろうかな…
イーサンは、この町のことや、冒険者のこと、イーサンの妹の話に、振られた話をオンパレードで披露する。
「——俺の何が悪いんだって話だろ? こっちだってタレ始め——」
イーサンの鼻を思いっきり摘み持ち上げる。ちょうど酒を一口飲んだイーサンが、盛大に口から酒を吹く。私には、かかっていない。良かった。
「ぶっはぁぁぁ……おい! テメェ何すんだよ! 息ができなくなるだろ!」
「喋るのやめて、口から息すればいいじゃん!」
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