初依頼
「「初依頼、楽しみ!!」」
双子と依頼先に向かう。依頼内容は庭掃除。誰もやりたくないようで、ボードにはたくさんの掃除系の依頼書が残っていた。
選んだ依頼書は、パトリック家の庭の雑草抜きと掃除だ。報酬は、一人銅貨一枚でポイントは一点。初依頼だし、簡単なのがいいよね?
受付でもらった地図だと、依頼主の家はこの辺なんだけど……あ、あったあった。あの赤い屋根だ。
家の前には、老人が揺り椅子に座ってくつろいでいた。
「こんにちは。冒険者ギルドから来ました」
「あー。もう一度いってくれ。わしゃ耳が遠いでよ」
「ぼ う け ん しゃ ギルド!」
耳から脳に伝わるまで数秒待つ。
「おー。そうか! そうか!」
「庭は、どこを掃除すればいいですか?」
「はぁ? なんといったのだ?」
「「に わ ど こ そ う じ?」」
双子が大きな声で聞くが、老人にはよく分からないと言う顔をされる。
ダメだ。爺さん、ちょっとボケてんじゃん。家の中から中年の女性が出てくる。
「あ! こら。爺さん。なにまた勝手に家に入ってきてんだい。隣の自分の家に帰んな!」
隣のジジイかよ!!
爺さんも無事家に帰ったので、改めて依頼を受けた冒険者である事を女性に伝える。
「よく来たね。こりゃ大きな犬だね。見ない顔だが、新人かい?」
「初依頼です。二匹とも大人しくさせておきます」
「そうかい? 双子の子も、ただの草抜きだから、そんなに緊張しなくて大丈夫よ」
ミセスパトリックと名乗った中年の女性は、丁寧にどの草を抜くのか教えてくれた。庭には小さな雑草がたくさん生えている。これは普通に時間がかかりそうだ。草抜きが終わったら、掃除の代わりに土を掘り起こしてほしいとお願いされる。大丈夫。土掘りは得意だから。
早速、草むしりを始める。
ブチブチブブチブチ
草むしりを開始して、一時間ほど経った?
「ミロ、ミラ。疲れてない? 大丈夫?」
「「うん。大丈夫!」」
これが若さの違いなのか? 二人とも張り切ってる。
コッコッコと庭の奥から鶏が二羽出てくる。
「うどん。ダメだよ。分かってるよね?」
「キュワーン」
鶏を追う事を禁止されたうどんは、木陰で昼寝をしていたユキに擦り寄り一緒に丸まって寝た。
草むしり、こんなもんじゃない? 立ち上がり、腰をコンコンと叩く。三人で不思議水を飲み疲労を回復する。新品カエデ、元気いっぱい!
「この水飲むと疲れも飛ぶね」
「次は、土掘りだね」
双子も更に元気いっぱい、やる気いっぱい。
草むしりは、雑草以外の草を抜けなかったので、地味な作業だった。でも、土掘りは別だ。魔石パワーでさっさと終わらせよう。
指定されていた場所の土を全部掘る。双子も一箇所の土掘りを担当。
「こりゃ、驚いたわね。全部掘ったのかい?」
通常は、時間内に二、三箇所掘れば良い方なのを……調子に乗って十箇所も掘ってしまった。
「こんな数の土掘り、あんた達が初めてだよ。報酬料を弾んでおくよ」
無事に初依頼を終え、冒険者ギルドに戻る。ミセスパトリックは、なんと報酬を一人銅貨二枚の倍に弾んでくれていた。
嬉しい!
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