二つ名は正しく

 今日は双子と初依頼を受ける日。庭掃除の依頼書は朝一で受付に持っていった。イーサンは休みか? 受付のどちらも女性だった。


「確かに受け付けました。昼の鐘には、にこちらの場所まで行ってください。依頼は、夕方前の鐘までです。詳しくは、依頼主に聞いてください」

「ありがとうございます」


 初依頼の受理も無事おわった。


「あ、それから…負けずに頑張ってください」

「…はい?」 

 

 何? なんで、そんな拳に力を入れていうの? 負けずに頑張る? 今日は、やけに周りからの視線も多い。

 

 依頼の時間まで、双子は剣の講習。私は、ユキとうどんのストレス発散のために、町の外に行くために門に来ている。門には、ゲ…オルドが立っている。


「ゲオルド。久しぶり~」

「あ! お前。そうか、無事に冒険者になったのか。良かったな…銅級…? あぁ、そうか」


 門番のゲオルドだ。銅級の冒険者タグに驚いていたが、色々理解が早いようだ。門の外には依頼で行くのかと聞かれる。


「ううん。散歩」

「…呑気なやつだな。気をつけろよ」


 ゲオルドが門を通してくれる。シャバの空気だ、と大声で叫ぶ。一度やってみたかった。


「てめぇ。聞こえてるぞ!」

「行ってきまーす!!」


 既に走り出した、ユキとうどんを追いかける。二匹とも足速い。二十分ほどランニングしたところに、謎の生物を発見する。

 なんだろう…これ。見てくれはヤマアラシ? でも、小さくはない。豚のサイズくらいある。

 ヤマアラシ(仮)が全身を逆撫でてこちらに突進してくる。続…この世界のアニマルはみんな凶暴な件。石の魔石を持って、攻撃の準備をするが…


「ぎゃああううん」


 どこからか飛んできたうどんに、ヤマアラシ(仮)は喉仏を噛みつかれ、暫く暴れるも息絶える。

 その後、ヤマアラシはユキとうどんが美味しくいただきました。

 二匹は、その後も盛大に走り回った。よく体力持つ。とにかく元気。持久力が良い? 丸一日食べなくても、動くのがこの二匹。

 時計を見ると、十時を過ぎたところだった。そろそろ戻るか。


「ユキ、うどん。帰るよー」


 二匹がもうダッシュで戻ってくる。門まで競争だ! と言いたいけど、そんな負け戦はしない。帰りは、許しを得て、ユキの背中に乗って門まで帰る。やはり、止まるところがうまくいかない…地面にコロコロと転がってしまう。

 門でゲオルドに冒険者タグを再び見せる。

 

「随分と汚れたな」

「うん」


 依頼は、庭掃除だけど…流石に着替えていくか。宿に戻り、着替えて双子を迎えに行く。

 冒険者ギルドに到着したら、ちょうど双子が地下の練習場から出てきた。


「お疲れ」

「カエデ。『土下座のカエデ』って何?」

「え? どこで聞いたの?」


 どうやら、この変な二つ名がギルド中に知れ渡っているようだ。道理で受付の子に妙な応援をされたんだ。明らかに…色々と勘違いされてるよね? カエデちゃんが土下座好きみたいに伝わってない?


 案の定…この二つ名の所為で、勘違いした冒険者が『自分たちも土下座しろ』と言うので、其々の願いを叶えてあげ…減点ペナルティは六点になった。その後、二つ名は『凶猛土下座のカエデ』に変更され、誰も土下座をお願いしなくなった。

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