多分バグ

 宿に戻ったら、双子は部屋で暇を弄んでいた。


「何してるの?」

「時間があったから、うどんを毛払いをして、賊の所で集めた宝石を並べてた」

「ミロも?」

「僕は剣を磨いていた」


 うどんのブラシ…これどこから手に入れたんだろう? 掃除用具に見えるんだけど…


「これ、どうしたの?」

「宿の人が馬用のを貸してくれたよ」


 ユキは、まだ自分に触れることを双子には許してはいないが、うどんは…うん。フレンドリーな奴だ。

 宝石も、どこかで売って双子の資金にしたほうがいい。自分の戦利品も換金したい。コリンが、商業ギルドで換金する的な事を言っていたけど…マルゲリータにでも聞いてみようかな。

 二人の剣の講習は、後数回で終わるそうだ。それが終わるまでは、討伐には行かない方がいいだろう…討伐ではない依頼なら受けれるよね?


「今日、依頼書の中に庭の掃除ってのがあったけど、明日の講習の後に依頼受けてみる?」

「「うん!!」」


 明日の目標も決まったところで、鐘が四回鳴る。もう日没? 今日は、時間が過ぎるのが早かった。んー。お腹空いてきた。ユキたちには、兎肉をあげる。市場で結構食材買ったからそれを使いたい。


「今日は、調理できるかな?」


 宿の受付に聞くと、今なら良いよと言われた。使用料に半銅貨渡す。

 『汚すんじゃないよ』と厨房に通されたが…ここが、汚れるとか心配無用って…既に…汚いから…汚いと言うか散らかってる…野菜のクズは、下に投げるのがルール? 色々床に転がっている。料理担当の男に挨拶する。


「火は、ここのを使え。ナイフは、持ってっか? 鍋とかも勝手に使っていいが、洗って元の場所に戻せよ」

「分かりました」


 火の場所は…かまどだ。リアルで見るの初めてかも。使い方が分からない。火は既にボーボーと出てるから…このまま使えそう。ギンから食材を受け取る。


「ミロ、ミラ。野菜切ってくれる?」


 双子には、野菜を切ってもらう。

 鍋を置いて、油は…ない。料理担当の姿は…見えない。聞くのも面倒だから、勝手に油と塩を借りる。鳥肉を焼いて不思議水を入れ煮る。

 煮立ったところで、灰汁を取り味見する。


「うまっ」


 何この旨さ。鳥の出汁うまっ。これだけで美味しい。ロングバードっけ? あれまた買おう。


「カエデ、野菜切ったよ。クズはどうすればいいの?」

「多分…床?」


 双子の切った野菜と醤油を入れる。ギンが、コレコレと黒い肉のブラッククローラーを出してくる。


「ギン、これ食べたいの?」

「カエデ、食べるだえ~」


 これ…どう調理するんだろう? 肉屋は、スープと言っていたので、鍋にそのままぶっ込む。鍋に投げ込んだブラッククローラーは、黒から赤黒くなった。匂いはいい。なんの匂いっけ? 魚介類の匂い?

 ロングバードとブラッククローラーの鍋が出来た。


「じゃあ、食べようか?」

「食べよー」

「お腹空いたー」


 ボウルに肉と野菜をよそう。早速一口、いただきます。

 うん。うまい! 

 ブラッククローラー。これは、濃厚な甘い味のある…蟹だな。うん。蟹。

 匂いにつられて料理担当の男が戻ってくる。


「ブラッククローラーか。そんなに大きな塊を入れたのか? 贅沢な使い方だな!」

「普通はどうやって使うの?」

「小さく切ってスープに入れるな」


 油とかを使ったお礼に、料理担当の男にも鍋を分ける。ついでに、ブラッククローラーはなにかと聞く。


「土の中に住む魔物だ。捕獲は簡単だが、見つけるのが大変なんだよ」


 土の中…嫌な予感がするけど、フォークは止まらない。


 




 

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