トマト、チーズ、バジル!
「賞金首を——」
「そこは、聞こえました。賞金首をお持ちとのこと…首はどこに?」
「ここ——」
フェルナンドに言われていた事を思い出す。このような上品な方に首をいきなり見せたら昇天してしまう。そういえば、フェルナンドの手紙があった。老婦に手紙を渡す。
手紙を読み始めた老婦は、穏やかな表情から徐々に厳しい顔つきに変わる。
「カエデさん。別室に案内いたします。こちらへどうぞ」
受付の老婦に連れてこられたのは、ギルドの二階部分にある個室。誰かの執務室? 綺麗に整理されて、花瓶には花が飾ってある。『座ってここで待ちなさい』と言われたので、大人しくソファに座って待つ。双子には、先に宿に帰ってもらった。
ノックと共に入ってきたのは、受付の老婦とガークだ。
「さっきぶりですね」
「…もう、問題を起こしたのか?」
違うって! 訝しげなガークの顔とは違い、受付の老婦は笑顔だ。逆に怖い。目が笑ってない!
「ガーク。カエデさんが『首残しのウルフ』賊首の妹イルゼを討伐したとの事、フェルナンド様より書面で報告されました。査定をお願いできるかしら?」
「ギルド長、本当か?」
え? 老婦がギルド長なの? こんな上品な方が、むさ苦しい野郎どもを束ねているの? 老婦は、ギルド長のマルゲリータ・シャスターと名乗った。ガークは、元冒険者でギルドでの立ち位置は部長のような感じらしい。
査定するから首を持ってこいと言われる。いきなり出すのはダメだと習ったので、後ろを振り返る。ギンよろしく。
「何故、後ろを向くんだ?」
「今から、首を出します。驚かないでくださいよ」
「はあ? 何言ってんだ? おい!」
首を出した瞬間に、ガークに肩を引っ張られる。バランスを崩して、お腹の位置に持っていた生首を股の間から床に落としてしまう。ペチャっと音が部屋に響いて全員の目線が、私の足元に向かう。
「どっから出してんだよ!」
「違う!」
ちゃんとゆっくり出そうとしたのに、ガークが肩を引っ張るから下に落ちたじゃん!
「魔道具を持っていたのね。カエデさんは、色々と秘密がありそうね」
マルゲリータの目がギラギラしていて怖い。早く宿に帰りたい。
ギンの収納は時間の進みがゆっくりなのか、生首はまだ大層フレッシュ。
生首の髪を掴み床から拾う。汚れてはいなさそう。一応、布で顔を拭き、生首をガークに渡す。
「そのまま渡すんじゃねぇよ!」
えぇぇ。じゃあ。どうやって渡すん? ギンに、罠で使っていた長めの杭を出してもらう。杭の先端に首をさしてガークに渡す。クイーンの編み込みの髪飾りが揺れて、でんでん太鼓みたい。
「ん」
「…ちげ…もういい。よこせ」
ガークに首を乱暴に奪われる。
「確かに、人相書のイルゼに似てるな」
賊に関しての詳細を聞かれたので、ある程度正直に答え、賊の住処で集めた冒険者タグと賊が身につけていたタグを渡す。ここ数週間、連絡の付かない冒険者が以前より多かったらしい。冒険者が野垂れ死ぬ事は珍しくなく、誰も賊が森にいるとは気づいていなかったらしい。
あの賊は、森に住み着いてから数週間っぽかったし…気づかないのも不思議ではない。
ギルド長のマルゲリータには、査定は数日かかるので、後日、また来てくれと言われギルドを後にする。
外はもうすっかり暗い。お腹すいた。ピザ食べたい。
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