▲1234の冒険者

 鉄級は、最低でも一週間に一回は依頼をこなさないと行けない。銅級は半月に一回。この世界の暦も大して以前の世界とは変わらないようだ。暫くは…この町で冒険者活動か。ポイントの確認は、ボードで確かめて欲しいとの事だった。鉄級は単独で森へ行くのを勧めない。行くならパーティを組むか、荷物持ちとして行くか、森の前の薬草だけ取った方が安全だと言われた。


「次に、ペナルティのお話をさせて頂きます」


 ペナルティ条件の説明が一番長かった。要約すると、ペナルティは減点方式だった。依頼を失敗すると、依頼の重要度により二から五点の減点。ギルド内や町で冒険者同士で騒ぎを起こしたら、一から三点の減点。詐欺や不正は十点の減点など…数値は、ギルドの判断で行うと説明を受ける。二十五点から減点され、ゼロになったら冒険者タグの没収。階級が上がれば、ペナルティ点数は帳消し。二十五点って結構あるよね。あのペナルティ男女一体、何をしたん?


「こちらの誓約書を確認後、署名と血判をお願いします」

「はい」


 誓約書は、先程のペナルティに関してや不正をしない宣言が書いてある。こちらの字は書けない。瀬戸楓と漢字で署名し、軽くナイフで親指を切って血判を押す。


「こちらに、手を添えてください」


 魔石が沢山散りばめられた板を差し出される。赤い魔石も付いているので触りたくない。


「それはなんですか?」

「こちらは、貴方の魔力を登録する物です。冒険者が犯罪を犯す事が、残念ながら少なくありません。魔法攻撃がされた際、痕跡で犯人を特定するのに使います」


 今まで全部アナログだったのに、何でそれだけハイテクなんだよ。魔力…ベニによると、カエデちゃんマジックパワーゼロなんだけど…大丈夫? 老婦がこちらをジッと見て、早くしろと圧を掛けている。仕方ないので、赤い魔石を避け板に手をつける。特に光るとか何もない。


「ありがとうございます。それでは、こちらが貴女の冒険者タグになります。タグを無くしましたら、銀貨三枚なので、よろしくお願いしますね」


 あれ? 大丈夫だったの? よく分からないけど、大丈夫だったならいいっか。タグを受け取ると▲1234とタグに彫ってあった。覚えやすい。▲部分は、今年の印。12は、このギルドの番号。私は、今年このギルドからの三十四番目の登録者と言う事だ。

 鉄のタグを眺めていたら、老婦の視線が肩にいるギンに移ったのが分かったが、彼女はギンの事を何も聞かず話を続けた。


「次に、従魔登録をお願いします」


 従魔登録は、一匹銅貨五枚。従魔の形体と名前の登録のみだった。従魔が何か悪さをすれば、主人が罰金を払うと言う誓約書にもサインする。ユキたちには、従魔用の印の札を着けるよう言われる。昨日、宿の前で話したシーラのモモンガも小さなハーネスをつけていた。とりあえず札を貰った紐に通して、二匹の首に着ける。


「それでは、冒険者登録は以上です。ご質問等ございますでしょうか?」

「はい。賞金首があるんですけど、どこで賞金を貰えるんですか?」

「…はい?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る