冒険者登録

 青札を持って受付に行く。この時間帯は、冒険者が多く列も長い。イーサンの方にも少ないが、人が並んでる。


「カエデ。冒険者登録は、あそこの受付だ」

「カイ、冒険者登録おめでとう」


 カイは、冒険者登録が既に終了して、手に入れた冒険者タグを首から下げていた。示された受付には、冒険者ギルドが似合わないエレガントな所作で業務をこなす、老婦いた。

 

「そういえば、カイの荷物をまだ預かってるんだけど…」

「また、明日取りに来ていいか?」


 確かに、荷物を入れる物がない。でも、預かっている荷物の中には遺髪がある。これだけは、早くお返しした方がいい。『輝く太陽の剣』パーティの遺族は、彼らがまだ森で冒険者の依頼をしていると思っているらしい。マジか…でも、考えてみれば…私たち以外で冒険者ギルドや遺族に伝える人いないよね? 同じパーティだったアリアはいるけど…カイが言うには、アリアは…遺族にどう面していいか分からずに躊躇しているらしい。本当か? 躊躇してる割には、借りた部屋を整理に行くのが早い。その辺の感覚が、この世界の住人は違う? カイに聞くと、パーティが借りている部屋が日割りだそうだ。パーティ唯一の生き残りのアリアは、撤去する日が延びた分だけ四倍の家賃を払わないと行けないらしい。うん。さっさとお片付けしないとね。


「カイ。遺族には、早く伝えてあげないと。これ遺髪、布に入れてるから…今日中に持っていって教えてあげなよ。冒険者ギルドには、私が伝えるから」


 分かったと遺髪を受け取り、冒険者ギルドを後にするカイ。


「「カエデ!! 終わったよ」」


 双子も嬉しそうに冒険者タグを見せてくる。

 冒険者登録の列は、私が最後。


「次、どうぞ」


 受付の老婦は声も落ち着いている。なんだか緊張する。青札を渡すと、書類を書き始めた。


「この度は、冒険者合格おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます」


 三枚の書類を見せられ、冒険者の説明が始まる。冒険者は階級があり、初心者の私は鉄級のタグ。鉄→銅→銀→金→白金の階級。その中でも銅級からは、二段回で分けてある。白金の上はミスリル級という、王国指定のミスリルで作られたメダルの様なタグだそうだ。ん…んん…


「それって青く光りますか?」

「不思議な事を聞くのね。でも、そうね。私も一度しか拝見した事ないけど、青く光って錆びないそうよ」

「へ、へ~」


 多分それ持ってます。ログハウスで拾いました。ミスリルの価値は高く、少量でも城が買えると言われた。

 売りたい…ダメ! カエデ! そんな事して見つかったら、また牢屋に入れられるって! ジャケットのボタンを閉める。

 次に、冒険者の依頼のシステムについて説明される。入り口右側にあるボードに毎朝、新しく入った依頼が貼り付けられるそうだ。早い者勝ちで、階級分けされてある。鉄の階級だと街中のお手伝いか薬草取りが多いそうだ。誰もやりたくないような依頼は、いつまでも残っているらしい。確かに古びた紙が端の方にまとめて貼られている。

 依頼達成の内容でポイントが加算され階級も上がるというシステム。次の銅の階級までは、百ポイントで達成だそうだ。別に、冒険者を本業にしたい訳じゃないから、どうでもいい。身分証が欲しかっただけだし。


「それから…銀級までは、定期的に依頼をこなさなければ、冒険者タグが没収されます。試験も受け直しになり、ポイントも消滅しますのでご注意ください」

「えぇぇ」

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