冒険者試験
「冒険者試験も、これなら行けるよね?」
「大丈夫だと思う。俺が前落ちたのは、一度も的に当てれなかっただからだしな」
落ちたら落ちた時に考えよう。今は、お腹の虫が騒いでる。時計を見ると昼時だ。スーパーとかなさそう…市場?を探すか? 今は、また宿屋の食堂に入る。
「いらっしゃーい。好きなとこに座ってー」
昨日のむさ苦しい雰囲気と違い、明るい女の子が給仕をしている。注文は、女の子に言えばいい感じ。昼のメニューを見る。四人とも同じものを注文する。グリルドチーズサンドとトマトのスープ。値段は半銅貨。
「おまちどー」
ガンとテーブルに酒のジョッキが置かれる。食べ物に付いてくるそうだ。ここの酒の定義って水なん? 流石に冒険者試験控えてるのに昼から飲まないって…
「酒は要らないです」
「んー。出したので飲んで下さい」
昨日の給仕のオヤジと同じセリフ。ここのポリシーか何か? 辺りを見回す。いたいた。
「そこの冒険者!」
「ああ? なんだ小娘」
「酒を四つ奢るから、ムギチャ四つ奢って」
酒より、麦茶の方が安いようで、冒険者は『いいのかよ? 俺だけ得した気分だな』と言いながら、快く麦茶を奢ってくれた。
「さ、食べよう」
パンもだけど…チーズもトマトもいつ振りだろう。頑張って森を抜けて良かった。三人も美味しそうにサンドを頬張る。
食事が終わり、カイとは一旦別れる。
「冒険者試験の時間に、またギルドで会おう」
そういえば、町に到着してから時計を見ていない。夕方前っていつの事を言ってんだ? 双子に聞いても朝と夜の鐘しか知らないと言う。
冒険者ギルドの受付に向かう。昼時のギルドは、随分と利用者が少ない。お姉さんの方は、相変わらず四、五人の列ができている。仕方ないのでイーサンの方に並ぶが…こいつ…寝てやがる。
「イーサン」
「…ぐーっ」
バシャっと水をかける。びっくりして飛び上がるイーサン。
「おはよう。イーサン」
「おいこら! くそガキ! 『おはよう』じゃねぇよ」
「夕方前っていつなの?」
「あぁ? 三回鐘が鳴った後だよ」
イーサンに、早くどっか行けとシッシされる。隣の受付のお姉さんと目が合い『よく起こしてくれた!』と心の声が聞こえる。イーサンのこれは通常運行か。
鐘は四回鳴るらしい。朝に一回、正午に二回、夕方前に三回、そして日没後に四回。そう言えば、今朝も鐘が聞こえた。八時と正午だったかな。昨日の夜に鐘が鳴ったのは覚えてない。
ユキたちの散歩をして宿に戻ると、鐘が三回鳴るのが聞こえる。時計を見ると十五時。冒険者ギルドに向かう。
ギルドの前には、すでにカイがいた。ギルドに入ると、《シケンここ》と書いたボードの前には、試験を受けにきた他の人たちが数人いた。みんな子供なのかと思ったけど、普通に三十代の男女もいた。
ボードの前に男女が立つ。二人ともがっしりした身体に、正にベテランって風貌だ。
「よし。これで全員揃ったか? 俺の名前は、ガーク、こっちはエミリアだ。今日の試験官だ。試験は、地下の試験場で行う。確認のために名前を呼ぶ。呼ばれたら答えろ」
名前を呼ばれ、元気よく手を挙げて答えたら、手を挙げる必要はないと言われた。えぇぇ。せっかく、ギンも一緒に手を挙げたのに。
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