練習

 面倒くさそうに、練習場の使用リストを確かめるお兄さん。名前をイーサンと言う。


「今だったら、空いてるぞ。使用料は一人銅貨一枚だ。冒険者登録も夕方前に来たら試験官いるから。このリストに名前かけ」


 イーサン、私の事は覚えてないようだ。やだな、酔っ払いの記憶喪失。

 リストのボードを受け取る。自分の名前書けない。ボードを見つめる。


「何だ? 字が書けないのか? かせ。名前は何だ?」

「カエデとミラとミロとカイ」

「え!?」


 次いでだし、カイの名前もリストに放り込む。目が治ったんだから大丈夫でしょ。年齢を聞かれたので、二十八と他は十四歳だと言った。


「嘘をつくな」


 えぇ。ばれちゃった? 双子は、高校生くらいに見えるから…いけると思ったんだけどね…うーん…ばれちゃったか。


「お前、成人したばかりだろ」

「は? 私?」

「すぐに老け込むんだから、若いうちは未熟さを楽しめ」


 視線が顔じゃなく、胸をみてやがる。イーサンは、違うと否定したが…視線は、私の顔より十五センチ南の方角を見ていた。こちらの成人は十八歳。二十八だと主張したけど、結局二十歳でリストに登録された。なお、双子は十四歳で何も問題なく冒険者試験に登録された。


「今、気づいたが、それは狼…いや、フェンリルか。冒険者試験に合格したら、従魔も登録しろよ。後、問題は起こすなよ」


 練習場の銅貨一枚をそれぞれ払う。イーサンが、あそこから地下の練習場に行けと指を差した方に向かう。

 階段を使い下りた場所は、薄暗い。所々照明があるけど…人もいるようだけどよく見えない。

 レンシュウノチュウイを読む。


1)マホウはマトにアテル

2)ヒトにマホウはうたない

3)ケンカしない


 小学生のグラウンドのルール? 的は黒い四角の岩に、赤で丸が書いてあった。


「じゃあ。カイから行く?」


 カイが見本も兼ねて、風の魔法のウインドカッターを撃つ。数回の攻撃で的には、七割の確率で当たる。以前より攻撃力が少ないのは、調整しているからだと言う。数日で成長したね。確かにフルパワーだと危ないかも…

 次に、私の番。的までの距離が近い。


「石バンバン」


 軽く五回投石して、五発とも命中。三人から拍手を頂く。双子たちの番だ。使えるのは、【ファイアーアロー】と【ファイアーウォール】だそうだ。


「「【我の手に炎を、強く敵を射抜け、ファイアーアロー】」」


 小さな炎が、二人の手の平から放たれる。二つの炎は、途中で融合。回転しながら、ドリルのように的にぶつかり燃え上がる。


「…うん。いいんじゃない?」


 宿で使われなくてよかった…

 火、まだ燃えてるし…ってか石が燃えてんのあれ?

 因みに、双子一人一人が別々に打ってもらった場合、そこまで火力は強くなかった。ファイアーウオールは、自分たちの周りを焚き火みたいに囲む魔法だった。当の本人たちは、火の壁は熱くない。カイと私は汗ダラダラだ。あつっ。もう消していいよ!

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