ヒキガエルに攫われた

 誰よりも早く目覚め、洞窟の外に出る。ちょうど日が昇る時間。いつもより遅く起きた。ストレッチと筋トレをしながら、今後どうするか考える。

 ギンも私の頭の上で、真似っこストレッチをしている。

 足の親指を切断した彼は、結局昨日の時点では目覚めていない。目覚めたとしても…歩けるのだろうか? すぐには無理そう。松葉杖的な補助があれば行けるか? それか、街に助けを求めて戻ってくるか…でも、それだと、その間は…ここに放置になるよね。この森に、身体が不自由な人を放置。鬼じゃん。

 他の人は、数時間のハイキングくらいなら出来ると思う。身体的怪我は、足の指の彼とコリンが一番酷く、他は不思議水である程度完治している。一番大きい魔石の不思議水のメーターを見るが、まだ満タン表示。


「おはようございます」

「おはよう。えーと…」

「エディの姉のリーヤです。助けて頂きありがとうございました」

「ううん。いいよ」


 エディも昨晩意識を取り戻し、今はまだ寝ているとの事。何故エディだけ賊に連れ回されてたのか疑問だったけど、魔物用の囮に使っていたらしい。あー。やっぱ賊は全員死んでよかったわ。

 リーヤと数人は、朝食の準備を始める。ユキとうどんを昨日は怖がっていたけど、今日は平気そう。

 スープの良い香りが森に漂う。お腹すいた。


「カエデ。男が目覚めたみたいだ」


 親指の彼が目覚めたとの知らせをカイに受け、寝かされている部屋へ朝食のスープを持って向かう。男はまだ所々痛々しいが、上半身を起こし壁に寄りかかりながらベッドの上にいた。


「顔の腫れが随分と引きましたね」

「…誰だ?」

「カエデと言います。こちら…ポーションです。飲んでください」


 不思議水を渡す。男は匂いを嗅いで一口飲むと、残りの水を一気飲みした。初め見た時よりもずっと顔の腫れが引いていて、意外とまだ若い青年なのに驚いた。

 足の怪我を確認する。不思議水、本当スゲー。何これ…傷口がほぼ塞がってない? 親指は残念だったが、他は大丈夫そうだ。

 

「賊は?」

「全滅ですね」

「冒険者か?」

「いいえ。これ朝食のスープです。食べて体力つけて」

「感謝する」


 男は、スープを受け取るとガツガツと口に注ぎ込み始めた。久しぶりの食事なのか、咽せながら急いで食べている。


「ゆっくり食べたほうがいいよ。えーと、名前は何?」

「…」


 えぇ。なんで黙るの? 偽名でもいいから言えよ。暫く待つが、男は黙々とスープを食べて名前を言わない。


「偽名でいいから、なんて呼べばいい?」

「好きに呼べ」

「そうですか…では、さん」

「ぶはっ。おい!」

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