ホテル洞窟
ブルルと身震いをする。頭を振り自分を諌める為に頬を両手で叩く。
パチンパチン
日に日にサイコパスカエデに近付いてない? あれを宇治金時って…恐ろしい! 今日、一日で色々ありすぎて頭の中が整理できない。
時計を見る。げっ。もう17時過ぎだ。怪我人も多い。今日の移動は無理そうだ…ここに泊まるしかない。快適、ホテル洞窟だ…はぁ…私は、一体いつになったら街に行けるの?
「治療します。怪我を見せてください」
「あ、ありがとう。それに…助けに来てくれて、ありがとうございました」
女性に手を握られ感謝される。別に助けに来たわけではない。カイが死ぬのが嫌だっただけだ。とりあえず、スマイルしておこう。ニカっと歯を見せる。
軽症の人も全員を治療する。聞くと、長くいる人も数ヶ月で、エディたちを含む半分くらいが同じ行商のキャラバンのようだ。ロワーに向かう途中で、数週間前に襲われ、この洞窟に来たのは最近らしい。調理をしていた母子は、村からロワーに向かう途中で襲われている。双子は、バーサと言う村の出身。地図で見るとロワーからは随分と離れた場所にある村のようだ。帰るにも遠く、しかも村自体が賊に襲われたようだ。足を怪我してた男は、誰よりも前からここにいて、素性は誰も知らないが、毎日のように拷問されていたらしい。
「そっか…一先ず、今晩はここに滞在だね。明日、怪我人の状況をみて…だね。今日は、食事をしてゆっくりしましょう」
母子が調理していたし、賊の部屋に食糧庫があったので、食べ物には困らないだろう。
賊首の部屋にいた女性二人も気がついたようで、他の人が状況を説明する。囚われていた人の中には、解放されたと聞いても、複雑な顔をする者もいた。
「カイ。アリアは…大丈夫そう?」
「まだ気を失っているが、できる事はした。ほとんど、ポーションのおかげだが…」
意識のないアリアと男性をベッドに運ぶ。こっちの人、やっぱりみんな、体が大きいよ。重い…重労働に息が上がる。
洞窟の外に出ると、既に暗くなっている。ユキとうどんが走り出す。獲物でも見つけたかな? 入り口には、未だ転がっているクイーンと人質役の女の死体があった。腕の折れていた男が、話しかけてくる。
「あれは、フェンリルですか?」
「はい。えーと…」
「コリンです。しがないキャラバンの副隊長でした。今では、半数以下で…この有様ですが…」
「カエデです。あの子たちは、ユキとうどんです」
コリンたちは、色々な都市を季節ごとに巡るキャラバンの商隊だったそうだ。洞窟の近くにキャラバンも馬もいないので、売られたか壊されたのかと肩を落としていた。
「賊のお宝がまだ残っているので、抱えれるだけ慰謝料を貰えばいいですよ」
「はは、確かにそうだな…あれは、どうするんだ? 埋めるなら手伝うが…」
コリンは、クイーンを睨みながら提案してくる。どうやら…賊首は、あの首を持ってる男だったが、指示や拷問はクイーンがしていたようだ。賊首にも命令していたそうで…爽やかな笑顔でコリンに答えた。
「勿論、首を切ります!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます