頭脳戦
走り続けたユキが、急停止する。勢い余ってユキの背中から空中に飛び出し、地面に転がる。
着地がきちんとできず、ゴロゴロと転がり、木に打つかる。痛い。
「ユキちゃん! 私の扱い、雑すぎじゃない!?」
大きな怪我はしていないが、地面に転がったせいであちこちに小さな怪我をしている。髪もボサボサで、小枝や葉っぱが付いている。
不思議水で傷を治して、髪を整える。葉っぱだらけじゃん! ユキをジト目で見る。
賊のテリトリーの近くまで来たと思う。
クンクン——
調理をしている匂いがする。賊の住処か? 匂いの出どこが見える所まで進む。ガハハと大きな笑い声が聞こえる。デジャブな雰囲気だ。双眼鏡を取り出し、笑い声のする方を観察する。
ああ…いる。
『俺たち賊です』と額に書いている様な輩が、洞窟の前を彷徨いている。ここから見える数は三人。それから、調理をしているのは、囚われている人だろうか? 薄着で靴も履いていなく、エディと同じ枷を付けた女性と子供がいる。
「状況…悪」
賊の住処、洞窟かよ!
洞窟の中に特攻とかしたくないんだけど!
別の賊がもう二人合流する。誰か人を引きずって…ぐっ。カイとエディじゃん! おーい! もう捕まったの? 早くない? あー、カイが、ボコボコに殴られている。殺されてないだけ…ラッキーなの…か?
カイとエディが木に縛り付けられ、更なる暴行を加えられる。賊が尋問しているようだけど…断片的な怒鳴り声しか聞こえない。『どこだ?』とか『どうやってだ?』が聞こえる。
殴る度に笑い声が聞こえる事から…賊は、焦ってはいない。奴らはまだ、外に出ていた仲間が全滅した事を知らないようだ。もう少しだけ近づいてみる。
ガサガサ
しまった…賊に気を取られて、足元を見ていなかった。ガサガサと揺れた茂みに賊が反応する。
「!!! 誰だ!? こいつの仲間がまだいたか? 見てこい」
「動物か魔物じゃねーか?」
「魔物なら余計始末した方がいいだろ。さっさと見てきやがれ!」
「へいへい」
めんどくさそうに、指図された男が剣をとる。男は、剣を振り回し、茂みをランダムに刺しながら、こちらに少しずつ向かってくる。
どうする!? 脳内で、小パニックを起こす。カエデ! 落ち着け…息を吸って…吐いて…
カエデ考えろ! 焦るな! 頭を使え!
頭…
ギンに賊首の頭を出してもらう。急いで髪を引っ掴み槍の先に刺す。
賊首の身長は…これぐらいだったかな? 身長程の高さで、茂みから賊首の顔を覗かせる。
「頭…? もう、おかえりですか?」
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