後処理
ユキが逃げた賊を咥えて戻ってくる。双眼鏡で確認。死んではなさそうだけど、ユキに付いたあの返り血…もう一人は、やったのだろう。
崖の下は酷い惨状だ。正直、目を逸らしたい。
「どうするんだ?」
「うん…普通、賊ってどう言う扱いなの?」
「…死刑です。冒険者ギルドでは、通り名のある賊なら賞金とか出ます」
「そうなの!?」
賞金って!? なんて喜んでたのも束の間…賞金を貰うには首を持参しないといけないらしい。戦国時代かよ!!
どれが賞金首かも分からない。賊首の男は可能性が高いけど…
即死した賊は兎も角、瀕死で苦しんでいる賊の放置は出来ない。万が一、回復して復讐とかされたらと思うと…後始末はしなければならない。
カイには、『崖の上にいていいよ』と言ったが、自分も行くと聞かない。カイも覚悟は出来たようだ。
崖を下りる。下りる場所を考えればよかった…岩でスプラッターした賊の横に着地する。
魔物の中身は散々見たけど、やっぱり人ってなると…おぇ。んんん。よし、吐くのは我慢できた。
「カイ、大丈夫——」
「おうぇぇぇぇ」
「ぐぇぇぇ」
貰いゲロだ。
気を取り直して…落ちた岩の周りの死体を確認。一人以外即死だね。瀕死の男も息をするのがやっとのようだ。スパキラ剣を出す。男が咎めるような目でこちらを睨む。
「私だって、こんなの本意じゃない。貴方達の自業自得だよ」
はぁ…遂にか。いや、もう既に石の弾丸で人を殺めたが、直接手を下す事に数秒躊躇する。
グッとスパキラ剣を握り、賊の首に沈める。短く小さい断絶魔が聞こえる。
それから、賊の生死を一人一人確認しては、永遠の眠りに付かせた。
血の臭いに賊の体臭が混ざった悪臭が漂う。アドレナリンのおかげか、臭いは、特に気にならない。
「カイ、無理しなくていいよ」
「大丈夫です。俺の戦いでもあります」
「カイ!! 危ない!!」
こちらに気が向いていたカイの脚を、死んだフリをしていた賊の短剣が掠る。スパキラ剣を短剣の賊の心臓目掛け投げる。死の間際まで鋭く非難した目付き。悪党はそっちだっての!
残りの賊を始末して、カイの傷を手当てをする。深くは無いけど、不思議水を傷にかけ、念の為、水を飲んでもらう。
ユキが、咥えていた賊を引きずってくる。賊は気絶しているが…どう見てもカイより若い。足には枷が付いている。
「子供…ユキ、これ逃げた賊なの?」
崖から見た逃げて行く賊と体格も服も違う気がする。随分と汚れている。賊の被害者? どちらにしろ、子供を害する事は出来ない。街まで連れて行くか。
カイも私に賛成のようだ。
「賊の死体はどうしますか?」
「使える物は貰って、残りは埋めるかな」
武器、防具それからアクセサリーや金目の物を貰う。完全に戦利品を物色する略奪者だよ。数人は冒険者なのか? 冒険者タグが付いている。冒険者へのイメージがどんどん下がる。
賊は、まとめて穴に埋める。全員、体が大きい。これだけで…重労働。最後は賊首の死体だ。
「首、どうしますか?」
「要らないかな」
まず、首を斬りたくない。それにギンにそんなばっちいものを収納させたくない。
一応、カイに賞金の額を聞いてみる。商人や貴族を何度も襲っている賊なら、家が買える額と言われた。
「カイ、さっさと首斬るよ!」
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