賊 3

 賊殺すとは言ったが…賊の数が多いな!  おい! どんどん増えてるじゃん!

 崖の上から双眼鏡で覗く。ゾロゾロと賊が仕掛けた落とし穴の近くに集まってくる。十五…二十…二十五かな? 男女双方いるが、男の方が多い。

 命令を下してるのは、あの一際は大きい男か…と言うか全体的に皆んな大柄だ。カイも十四歳なのに大きいとは思ってた。まぁ、的が大きくなる分には文句はない。


「カイ。攻撃開始するから」

「俺はどうすれば?」

「とりあえず温存だね」


 息を潜め、崖から顔を出す。

 土の魔石を握りしめ、息を吸ってゆっくり吐く。狙いは、賊首らしき男だ。


「石バンバン」

「え?」


 パァンパァンパァン


 カイが何か言ったけどれ、今は集中だ。

 森に乾いた音が鳴り響く。放った三発中、二発が賊首の胸部分に命中。貫かれた男も他の賊も何が起こったか分からず、時の止まったような時間が数秒間流れる。

 賊首が、血を吐き胸を抑えながら地面に崩れ落ちる。


「頭!! 襲撃だ!!」

「どこからだ!?」


 賊があちこちと動くので、的を絞れない。仕方ない。無数の杭が敵に降るイメージで石の魔石から攻撃を放つ。


「石バンバン」


 放たれた杭は、三十本ほど? 今までは、石一つで攻撃してたから、こんな同時攻撃も出来るって…有能すぎじゃない? この石。無理しすぎて、光の魔石みたいに割れたら困るけど、今は賊に殺される方が困る。

 杭が木や地面、そして…人に突き刺さる音が聞こえる。エグい。

 直ぐに次の杭の雨を放つ。


「石バンバン」


 賊から、『逃げろ』と悲鳴が聞こえる。

 喚き叫ぶ者やパニックで落とし穴に落ちる者。まだ元気そうだ。三回目の杭の攻撃を放つ。


「上だ! あそこにいるぞ!」


 気づかれたか。だが、三回の杭の雨で動く事のできる賊は、片手で数えるほどしか残っていない。

 崖を登り始めた賊には、岩を落とした。岩に潰されて即死する者は、幸運だったかも知れない。岩が落ちた場所を見ると、遠くて良かった。モザイク現場だ。


「カエデ、あいつ詠唱してる」

「石バンバン」


 詠唱中の賊を杭が貫く。『逃げるぞ』と賊が二人が来た道へ逃走を始める。


「ユキちゃん!」


 傍観してたユキが、一気に崖を駆け下り、地面にうごめく賊を踏み台にして逃げた者を追いかける。容赦ないな。うどんは…うん。自分のしっぽ追いかけてるわ。平和だね。


「カイ。大丈夫?」

「は、はい。カエデ…凄い魔法使いだったんだな。あの…石バンバンって…?」

「詠唱だけど?」

「あ、そうですか」




 

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