ヒーローってお人好しなだけじゃん
ザッシュ
賊首の頭を切り離したのは良いけど…その後を考えてなかった。ゴミ袋はもうない。仕方ないので、手袋をつけて布に包む。
ギンには収納したくないので、賊が持っていた槍の先端に布を結びつける。ジワっと布が赤く染まる。
ユキの連れてきた子供は、まだ気絶している。ペシペシと子供の顔を叩いてみる。起きない。
とりあえず、この枷は外したい。枷は両足首をチェーンで繋げた物で、小幅でしか歩く事が出来ない仕様になっている。鍵穴も無い。何度か地面に膝から転けたのだろうか? 子供の脚は、打傷や擦り傷だらけ。
スパキラ剣でチェーンを斬る。足首の枷は、今は取り外せない。
不思議水で、子供の怪我した箇所を洗う。
賊を埋葬して、手を合わせる。悪事を犯していた奴らだが、最後くらい誰かが祈ってもいいよね。
ギンも、私の真似をして手を合わせている。真似っこ可愛い。
さて、出発だ。
「俺が、その子を背負います」
「そう? じゃあ…私が生首担当かぁ。今年は、サンタの悪い子リストにでも載ってたかなぁ…」
「…」
「どうした?」
急にカイが黙り込む。サンタリストの話が通じなかったかな?
カイは子供を背負い、私は生首ぶら下げて出発した。道中、うどんが生首を投げろとおねだりする。
「うどん。ダメ。これで、家が買えるかもしれないんだよ!」
「…」
「カイ、さっきからどうして静かなの?」
「い、いえ。ただ…アリアの事が気になって」
アリア? 誰かと思ったら、カイを置いて行ったパーティーにいた、あの魅力的な格好をしたシスターの事だった。完全に忘れてた。
まさか…助けたいの? いや、気持ちは分からなくないけど…生きてるか分からない。生きてたとしても…多分、賊のすみかに囚われているだろうね。賊の残り人数が分からない状態で特攻とか、両手上げて反対。
「お人好しすぎじゃない? それに賊と戦えるの?」
「俺じゃあ…力不足なのは、分かってる」
カイの目は治ったし、あの威力の風魔法なら力不足では無い。でも、賊のテリトリー攻めとか…こっちが不利だよ。さっき賊に勝てたのだって、崖というハンデがあったからだ。
カイが背負っていた子供が、モゾモゾし始める。起きた? 顔を覗くと怯えた表情でこちらを見る青い目があった。足を止め、カイが子供を一旦下ろす。
「あぁ」
「大丈夫だから。喉乾いたでしょう?」
水を与えると、凄い勢いで飲み始める。よっぽど喉が渇いてたんだね。水を飲み終わった少年は、小さく『ありがとう』と呟いた。多分、少年だ。見かけは女の子っぽいけど…
少年は、エディと言うらしい。エディは賊の住処に姉が居るから戻ると譲らない。
カイは、チラッとこちらに視線を送る。
ノーノーノー
カエデはノーと言える日本人だから!
二人して潤んだ目でこっち見んな!
これじゃあ、流れ的にヒーローの道!
カエデちゃんは、そんな漢なキャラじゃないから!!
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